2017 Fiscal Year Research-status Report
母体感染により発症する自閉症に対するフラボノイドの予防効果
Project/Area Number |
17K18010
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
吉田 路子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70754571)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / フラボノイド / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)は、コミュニケーションの障害等により日常生活困難をきたすため、近年の患者数の急激な増加は、医学的にも社会的にも重要な問題となっているが、多数の遺伝要因と環境要因の関与が示唆され、未だメカニズムは不明で、有効な治療法はない。本研究の目的は、近年、単独で自閉症を発症し得る環境要因のひとつとして注目されている「母体感染により胎児に惹起される慢性炎症(maternal immune activation : MIA)」により発症するASDをターゲットに、発症予防効果を持つ安全な食品成分の探索を行うことであり、炎症性サイトカイン産生抑制効果が明らかになったフラボノイドに着目し、表現型を改善し得るものをスクリーニングの後、投与時期・量の決定を行うことである。 今年度は、すでに確立していた大脳皮質形成過程を模倣したiPS細胞由来の神経凝集体にIL-6を投与することにより、JAK/STAT シグナルの活性化が惹起され、CTIP2 陽性(神経細胞)細胞数減少、GFAP 陽性(アストロサイト)細胞数増加といった、「MIA によるASD」の大脳皮質モデルを構築し、STAT3 リン酸化阻害剤であるStatic 投与により上記表現型が回復することを示した。さらにフラボノイドの一種であるLuteolinをIL-6と同時に投与することによって、Static同様にSTAT3 リン酸化を阻害し、CTIP2 陽性細胞数減少、GFAP 陽性細胞数増加が回復することを示した。また、Luteolinの投与量増加により細胞のアポトーシスが誘導されることも明らかにし、適切な投与量の検討が必要であることも示し、論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
iPS 細胞から分化誘導し、大脳皮質の形成過程を模倣した神経細胞凝集体を用い、MIA によるASD の表現型再現と、STAT3 リン酸化阻害剤であるStatic 投与による表現型の回復、さらにフラボノイドの一種であるLuteolin投与による表現型の回復までは順調に進行した。また、Luteolinの過量投与による細胞死という予想外の結果を得たが、アポトーシスによるものであることを明らかにし、上記内容で論文発表を行った。 上記のASD モデルでは、神経細胞とアストロサイトを含む神経細胞凝集体の分化誘導に60日間を要し、スクリーニングには適さないことから、より簡便な分化系の構築に着手したため、進捗が予定よりやや遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニング可能となる、より簡便な分化誘導系を完成させ、MIAによるASDの表現型を回復させる安全な食品成分のスクリーニングに着手する。
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Causes of Carryover |
スクリーニングを行う予定だったが、分化誘導系の再構築のため、先送りになった。また、予定していた学会に参加できなかった。次年度にスクリーニングを行うために使用する。
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