2020 Fiscal Year Annual Research Report
Basic Study on the Trading Pass System in the 17th century East China Sea Maritime World
Project/Area Number |
17K18011
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
彭 浩 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (80779372)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | トレーディング・パス / 自由貿易 / 牌照 / 通商 / 制度 / パス |
Outline of Annual Research Achievements |
VOC(オランダ東インド会社)商務日記のパス関係記事の整理・考察が進み、研究途中の成果報告として、まず2020年9月に「長崎学ネットワーク会議公開学習会」で、「十七世紀東アジア海域のトレーディング・パス」というテーマ研究発表を行った。それを修正したうえで、また10月末に近世史フォーラム・海域アジア史研究会の共催研究会で、「十七世紀前期東アジア海域のトレーディング・パス―オランダ東インド会社商務日記に収録された事例を中心に―」というテーマの報告を実施した。報告では、近世東アジア海域の貿易港市の管理制度という問題意識を整理したうえで、VOCの東アジア進出を手掛かりに、①タイオワン(蘭領台湾沿海地方)などの植民地都市に往来する商船への「pas」による管理、②通商のため現地政権から獲得する通商許可書(徳川幕府の「朱印状」や明朝の「文引」)などの記事を分析した。17世紀前期の東アジア海域において多様なトレーディング・パスが併存していた状況を確認する一方、トレーディング・パスが朝貢貿易の衰退・条約体制の未成立という環境のもと海域通商秩序の維持に重要な役割を果たしていたという考えを示すに至った。また、VOCが現地政権と交渉した際に持ち出した「自由貿易」(vrijen handel)の認識に留意し、Ⅰ.商館設置・代表駐在、Ⅱ.現地政権との直接交渉、Ⅲ.公文書による権益保障という構成要素からこの時点各地での交渉の達成状況をまとめ、達成度が低いほど現地政権の通行許可書が持つ意義が高かったという暫定結論に結びついた。 なお、本科研が始まった段階から進行してきた清朝の渡海貿易「牌照」(通航許可書か通商許可書の性格を持つ公文書)をめぐる考察の成果も文章化し、「清朝中期の海外貿易と「牌照」」というテーマの論文を『国立歴史民俗博物館研究報告』に投稿し、いま審査を受けている段階である。
|
Research Products
(2 results)