2019 Fiscal Year Research-status Report
Photoreduction of carbon dioxide using porous glass nanocavity under ambient condition
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17K18013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野地 智康 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40452205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 多孔質 / ガラス / ギ酸 / 光水素発生 / 嫌気 / 再生可能 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の結果から、多孔質ガラス板内部に導入したRu金属錯体とメチルビオロゲン(MV)によって細孔内部に存在する酸素を還元する速度と、多孔質ガラス板外部から内部に入る酸素流入速度が500倍以上差があることがわかった。上記の反応系に限らず、光化学系I-白金ナノ粒子複合体(PSI-PtNP)の光水素発生系でも酸素大気下における光水素発生が可能なことから、同様なことが起きている可能性がある。そこで、PSIの過渡吸収測定によるP700+の寿命が酸素濃度に応じて変化することを検証し、PSIの電荷分離状態の寿命から細孔内部の酸素濃度を見積もった。さらに、どれくらいの光照射で、酸素濃度がほぼゼロに達するのかを検討した。その結果、多孔質ガラス板内部に固定したPSIを光照射することで、約5分以内に酸素濃度はほぼゼロになることがわかった。PSIの鉄硫黄クラスター(FB)からP700に電子が戻る時定数は溶液中で30-90 msであるが、酸素への電子移動速度を考慮した反応スキームを考えることで約200 ms程度となった。多孔質ガラス板内部に固定されたPSIの寿命約200 msはこれに匹敵し、酸素大気と平衡の溶液中のPSIと比較して、電荷分離状態の寿命が2-3倍に延びていた。したがって、多孔質ガラス板内部のPSIの光反応により1.細孔内部の酸素が還元、2.嫌気条件の形成、3.PtNPによる水素発生が酸素阻害を受けなくなり、4. 大気下でもPSI-PtNPによる水素発生が可能、になる機構を説明できた。 光化学系II(PSII)とキノンを高濃度に多孔質ガラス板内部に導入すると、キノンの還元速度はPSII溶液系に匹敵した。多孔質ガラス板内部に固定されたPSI, PSIIは均一溶液系と同等以上の機能を獲得できる。タンパク質の光反応を理解する理論化学的アプローチを進めるため、タンパク質中の色素の吸収を計算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
PSI, PSIIに関する論文完成のために必要な補足データの収集、レート方程式の検討、解析に時間を要した。論文完成のため、1年間延長を申請した。以上のことから、遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
多孔質ガラス板内部に固定されたPSI, PSIIの活性を直接的に示す分光データを得ることができた。その解析もほぼ完了した。今後は、多孔質ガラス板を利用することで、酸素大気下でも二酸化炭素や水素イオンの光還元に伴うギ酸や水素分子を合成する人工光合成が可能となる機構を、定量的に説明した論文発表を行う。光化学系IIのキノン還元速度は、「天然の葉に匹敵するほどの驚異的な速度を有するガラス」という他に類を見ない新しい人工光合成デバイスを作ることができた。しかし、光化学系Iの方は、律速段階がcyt c6を介した電子移動であるため、PSIの有する反応速度の数%しか水素発生に使われていなかった。PSI自身の活性は維持されているため、cyt c6からPSIへの電子移動、および、PSIからPtNPへの電子移動を改善すれば、PSII同様に、天然の葉に匹敵するPSIの反応速度で、酸素大気で機能する「光水素発生ガラス」を作ることができる。 これらの電子移動の律速段階を改善することは、実験だけでは解決できない部分も多い、今後は、東京大学 先端科学技術センターの石北研究室の理論化学計算を行い、光合成タンパク質の光補修、電子移動機構を明らかにし、本研究テーマに則した人工光合成の研究の発展に貢献する。
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Causes of Carryover |
大阪市立大学から東京大学への異動に伴い、物品の購入について再検討する必要があった。既にその計画の見直しを行ったが、研究進行(主に実験データの所得、その解析)に時間を要したため、再度の計画の見直しを行った。物品購入については現在の研究進捗状況に合わせて合理的に慎重に判断するために計画延期が必要と判断した。また、多くの学会がキャンセルになったため、計画していた旅費等が使われなった。以上の理由から、次年度に、学会発表、論文の英文校正などを行うために、次年度に繰り越しした方が研究を進めるために合理的と考えたため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(7 results)