2021 Fiscal Year Research-status Report
Photoreduction of carbon dioxide using porous glass nanocavity under ambient condition
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17K18013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野地 智康 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40452205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成 / フィコビリソーム / 光化学系I / 励起エネルギー移動 / 光捕集アンテナ |
Outline of Annual Research Achievements |
天然の光合成系において、シアノバクテリアの光化学系Iには、ロッド型フィコビリソームがアンテナとして結合している。しかし、エネルギー移動の効率と機構は明らかになっていなかった。フィコビリソームは550-650 nmに吸収を持ち、光化学系Iが持つクロロフィルaがあまり吸収しない波長領域の吸収を補う役目を担っている。天然-人工ハイブリッド光合成系において、光化学系Iの光捕集アンテナを拡張することは太陽光を効率よく捉えるために重要である。まずは、天然の光合成において、ロッド型フィコビリソームから光化学系Iへのエネルギー移動効率の定量とその機構を解析が必要である。既に取得していた時間分解蛍光スペクトルデータから、エネルギー効率の解析を行った。その結果、時定数90 ps, エネルギー移動効率95%で、ロッド型フィコビリソームから光化学系Iにエネルギー移動が起きていることがわかった。ロッド型フィコビリソームに結合している色素フィコシアノビリンのある一分子が他のフィコシアノビリンよりも長波長化しており、そのフィコシアノビリンをレッドフィコシアノビリンと名付けた。通常のフィコシアノビリンの蛍光波長は640 nmであるが、レッドフィコシアノビリンの蛍光波長は670 nmであった。これは、クロロフィルaとの距離が3.9 nm離れていても、95%のエネルギー移動効率を達成できるように、蛍光波長を670 nmに長波長化させ、光化学系Iのクロロフィルの吸収670 nmに合致するように調整したのだと考えられる。ロッド型フィコビリソームが3.9 nm離れて、光化学系Iの外側に結合しているのは、外から内側に向かってエネルギー移動させるためと、フェレドキシンとの反応を円滑にさせるためであり、光化学系Iにとって合理的な光捕集アンテナである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
光化学系I-ロッド型フィコビリソームの解析が終わり、論文を発表することができた。人工光合成、光合成の研究以外の研究成果も上がりつつあるが、一方で、光化学系II-キノン-多孔質ガラス板の系、光化学系I-白金ナノ粒子-多孔質ガラス板の系の2つの論文が完成していないため、研究は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
光化学系II-キノン-多孔質ガラス板の系、光化学系I-白金ナノ粒子-多孔質ガラス板の2つの実験は完了しており、解析を行い、論文を完成させる。分子動力学シミュレーションを用いた計算手法を導入し、基質とタンパク質の親和力の解析を行う新しい試みを導入できたので、このような手法を用いて、天然のタンパク質の解明を行い、それを人工光合成系の解析に役立てたい。 水素発生触媒である白金ナノ粒子は光化学系Iの鉄硫黄クラスター側(フェレドキシンと反応する部位)に結合しているため、光捕集アンテナは光化学系Iの端に結合させる必要がある。ロッド型フィコビリソームを、白金ナノ粒子が結合した光化学系Iに結合させることができれば、可視領域全領域400-700 nmで高効率に励起される光水素発生触媒の実現が期待できる。
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Causes of Carryover |
ロッド型フィコビリソームから光化学系Iへの励起エネルギー移動の論文は完成したが、多孔質ガラス板を用いた天然-人工ハイブリッド系の論文、2つが完成しなかったため、英文校正費が使用されなかったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)