2020 Fiscal Year Research-status Report
近赤外線を用いた銀河面リッジX線放射を構成する天体種族の解明
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17K18019
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森鼻 久美子 名古屋大学, 教養教育院, 講師 (50640843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | X線天文学 / 赤外線天文学 / 銀河面 |
Outline of Annual Research Achievements |
天の川銀河の銀河面に沿って分布する見かけ上拡がったX線放射に銀河面リッジX線放射 (リッジ放射) がある。この放射は数千万度にも及ぶ熱的放射で、X線スペクトル中に電離度の異なる3本の鉄輝線を持つ。リッジ放射は銀河バルジ領域では、暗いX線点源の重ね合わせであることが分かっているが、その他の領域の起源は諸説あり未だ明らかになっていない。点源の候補として定性的には、磁場を持つ激変星やフレア星が考えられているものの、個々のX線点源の乏しい光子統計のため、個々のX線点源の正体をX線観測のみで調べることが難しい。 そこで、星間吸収の影響が小さい近赤外線で銀河面上の激変星探査を行い、リッジ放射の起源を探る。構成する種族である激変星の近赤外線スペクトル中の水素の再結合線 (Paβ 1.28 μm)に着目し、Paβ波長帯にのみ透過幅をもつ狭帯域フィルターと本研究の1年目に製作したPaβ連続光取得用フィルターを用いて銀河面上の深いX線観測がある領域のマッピング観測を行なった。観測領域であるチャンドラ衛星で深いX線観測が行われた領域 (336.5度<銀経<338.5度, -0.4度<銀緯<0.4度、全61視野) の約9割の観測を終え、激変星候補天体を抽出した。残りの視野を本年度観測予定であったが、新型コロナウイルスの影響で望遠鏡のある南アフリカへ渡航し観測を行うことができなかった。 また、すばる望遠鏡による銀河バルジ領域の近赤外線深撮像観測データを用いて、バルジ領域のX線点源の約50%に近赤外線で対応天体を見つけた。加えて、Gaia衛星により初めてバルジ領域のX線放射の構成点源を視線方向に分解し、バルジ領域の放射に寄与する天体種族は、磁場の強い激変星より磁場の弱い激変星や非接触型連星系の白色矮性連星系が寄与していることが分かった。これらの結果を投稿論文としてまとめ、投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に南アフリカに渡航し、残りの視野を観測することにより、本研究の観測領域の全視野の観測を終えることができる予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で、観測装置のある南アフリカ天文台IRSF望遠鏡は、2020年3月から運用停止状態が続いており、2021年5月現在も運用が再開されていない。このため、渡航して本研究に必要な残りの観測データを取得することができなかった。この点については、新型コロナウイルスが収束し、観測が再開されたら、データ取得を行いたい。 また、本研究で開発、製作した特殊な狭帯域フィルターの性能について、観測データを元にまとめ、SPIE Astronomical Telescope + Instrumentationにて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べたように、新型コロナウイルスの影響でデータ取得が2020年度に行うことができなかった領域の観測を、新型コロナウイルスが収束したら、早急に行う予定である。これにより、本研究の全データが揃う。データが揃い次第、残りの領域のデータ解析を行い、研究成果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルスの影響により望遠鏡がある南アフリカ天文台IRSF望遠鏡が運用停止となったこと、また、日本から南アフリカへの渡航が外務省から渡航中止勧告が出ており渡航できなかったことから、外国旅費を使用することができなかった。このため、旅費予算を次年度使用額として繰り越した。次年度使用額については、新型コロナウイルスが収束した後、南アフリカへの観測のための渡航費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)