2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical analyses of social security systems financed by VAT and fiscal policies
Project/Area Number |
17K18032
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
前林 紀孝 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (30735733)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 年金目的消費税 / 経済成長 / 経済厚生 / 財政健全化 |
Outline of Annual Research Achievements |
公的年金の財源を消費税によって賄う年金目的消費税の導入が年金財政の健全化とそれを下支えする経済成長への影響について理論的分析を行った。年金制度の経済成長効果として、年金制度が持つ勤労世代から老年世代への所得移転機能が、老年世代の年金所得の充足によって現役世代への長期的投資につながるかどうかに着眼点を置き考察した。年金受給世代が年金負担世代に対し、何も投資を行わなければ、年金負担によるマイナスの経済成長効果が働いてしまうが、現に多くの家計では、親が子世代に教育投資や遺産を通じて子世代への利他的な投資を行っている。このように利他的な家計を考えた場合、年金保険料負担によるマイナスの経済効果と年金所得を通じた投資へのプラスの効果が発生する。理論分析によりこの2つの効果を比較し、以下のような結果を得た。まず、賃金ベースの年金から消費税財源の年金への移行により、年金負担によるマイナスの経済成長効果を軽減できることが示せた。さらに、消費税を年金財源だけでなく教育やイノベーションなどの投資支出への補助金や軽減税措置に用いることで、年金所得の投資へのプラスの効果を促進し、経済成長を押し上げる可能性があることが示せた。この研究は2019年10月にJournal of Public economic Theoryに掲載されることになった。また、財政の持続可能性を考察する研究として格差を是正する所得再分配政策が財政の持続可能性と格差に及ぼす影響について理論的分析を行った。国債残高が累増し財政運営が持続不可能になるフェイズに突入すると国債残高と格差が両方拡大してしまい、所得再分配政策は財政状況の悪化と格差拡大をもたらすことが示され、2019年6月にMacroeconomic Dynamicsに掲載させることになった。
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