2020 Fiscal Year Research-status Report
The international comparison regarding social context embeded student-athlete's career development
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17K18036
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
束原 文郎 京都先端科学大学, 健康医療学部, 准教授 (50453246)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大学生アスリート / キャリア形成 / 大学新卒 / スポーツ推薦 / 体育会系 |
Outline of Annual Research Achievements |
デンマークのエリートスポーツ政策に関する調査の一環で行った,中央・地方競技団体,自治体,学校が連携する学生アスリート支援策に関する調査結果を,日比野幹生, & 束原文郎. (2020). デンマークのエリートスポーツ政策の特性. オリンピックスポーツ文化研究, 5, 131-148.にまとめた.デンマークでは,「学生アスリート」として認定を受けるのも,本人による中央スポーツ統括機関や地方自治体の教育委員会への申請がベースになる.本人の申請に基づき,学生アスリートとしての認定を受け,その認定に基づいて,教育現場では一般の生徒・学生と同様の教育内容を享受できるよう融通する. また,戦前日本の大学で教育を受け満洲に渡った2人のラガーマンについて,束原文郎. (2020). 大学ラグビー界の聖人:星名秦. In 高嶋航 & 金誠 (Eds.), 帝国日本と越境するアスリート (1st ed., p. pp.97-105). アジアラグビー『永遠の一三番』:柯子彰. In 高嶋航 & 金誠 (Eds.), 帝国日本と越境するアスリート (1st ed., p. pp.226-234). 塙書房.にまとめた.戦後,星名秦は日本の大学ラグビー,柯子彰は台湾を中心にアジアラグビーの普及に尽力した. 2010年代に入ってからの学生アスリートの顕著な増加は,少子化に喘ぐ中小私大の生き残り(学生確保)戦略の帰結として,スポーツ推薦学生の急増を反映した現象であることを指摘し,そのスポーツ推薦学生の実態を学業成績と競技成績の観点から記述的に分析した.スポーツ推薦学生が学業と競技の双方から疎外されている可能性に警鐘を鳴らした.束原文郎. (2021). “スポーツ推薦体育会系”の実像―― “一般受験体育会系”との比較から. 体育の科学, 71(2), 93-102.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初より豪州への調査を企画していたが,新型コロナウィルス感染症の蔓延予防の観点から調査旅行を見合わせている.国際学会への参加もできず,国外の研究者との連携もなかなか上手くいっていない.
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症が収まれば,豪州調査に行く.豪州調査に行けなければ,以下の通り,大学期に顕著なスポーツ上達を遂げたものに対するインタビュー調査を行う. 感染状況が落ち着かず,それがかなわない場合,国内の体育会系のキャリア形成研究で触れられて来なかったスポーツの上達経験とキャリア形成の関連性を検討する. これまでの学生アスリートのキャリア形成に関する研究調査は,体育会組織に所属することによるジェネリックスキルや社会性(ライフスキル)の発達(清水・島本,2011;L. Kamas, 2020;Mynavi,2021),社会関係資本(OB・OGネットワーク)の獲得(束原,2021b;Mynavi,2021)を主な説明変数として捉えるに留まり,顕著なスポーツの上達=競技力向上そのものの影響に真正面から照準することはなかった. 大学期は身体的成長による自然な上達が見込めなくなるため,顕著な競技力向上には論理的思考と科学的合理性に基づく意識的なトレーニングが不可欠となる時期であり,大学スポーツという制度は学生アスリートに対しそうした科学的試行錯誤の場を提供することを通じて高等教育の効果を高めることが期待されている(UNIVAS,ONLINE).だとすれば,体育会系就職が成立する社会学的メカニズムの中で,「大学期の科学的合理性に基づくスポーツの上達経験そのものが卒業後のキャリア形成に対してもつ意味や機能」をこそ問う必要がある.したがって,大学期の論理的思考と科学的合理性に基づく顕著な競技力向上経験が卒業後のキャリア形成に及ぼす影響を明らかにすることを試みる.
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Causes of Carryover |
豪州調査旅行を計画し,旅費としての支出を予定ていたが,新型コロナウィルス感染症の蔓延により旅行を取りやめ,旅費としての支出がなくなった. 次年度,感染症の状況により引き続き国際調査ができなくなった場合は,大学期における競技力向上経験とキャリア形成に関するウェブアンケート調査(20代~50代の男女就労者: 体育会系600 / その他の課外活動600 / 無所属600 = 計1,800)を実施し,顕著な競技力向上経験と,勤続年数や所得の状況を含む労働領域への影響について社会的分布を明らかにする.
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