2017 Fiscal Year Research-status Report
使用依拠モデルに基づく萌芽的構文・橋渡し的構文の創発に関する文法研究
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17K18037
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
對馬 康博 藤女子大学, 文学部, 講師 (50583093)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 使用依拠モデル / 構文ネットワーク / 構文の創発 / 認知メカニズム / 認知文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成29年度の研究課題として、萌芽的構文・橋渡し的構文である「主題非明示型結果構文(Implicit Theme Resultative Construction)」を考察対象とし、創発の仕組みの解明を中心に取り組んだ。当該年度の研究計画として、(1)この構文の初出時期を特定するということ、(2)この構文は萌芽的構文として結果構文と中間構文の特性の一部を継承する生産性の低いものであるが、両構文が融合することによって創発した可能性が指摘されており、結果として橋渡し的構文となるこの構文の融合過程にはどのような認知操作が関与しているのかを明らかにすること、(3)この構文が独立した萌芽的構文だとすれば、どのような独自の認知操作が関与しているのかを明らかにすること、以上3点の解明を目指した。 これに対する研究実績として、研究計画(2)及び(3)の観点については、まず、主題明示型結果構文が萌芽的構文であることを確認した上で、この構文は、Langacker (2009)の認知文法のカテゴリー化の枠組みに基づいて、隣接しているより大きく確立した言語単位である結果構文と中間構文から換喩(metonymy)という認知操作を通じて増幅的(augmentative)拡張により創発し、橋渡し的構文となったものであることを明らかにした。また、その拡張によって自ずから生じるこの構文独自の認知操作について、認知ドメインのシフトなどが関与していることを明らかにした。この研究実績の中間報告として、14th International Cognitive Linguistics Conferenceの研究発表にて公表した。 一方、計画(1)の主題非明示型結果構文の初出時期の特定については、やや遅れている。目安はついているものの、確実な経験的証拠を得てから報告する必要があると考えているからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも報告したように、3点掲げた当該年度の研究計画のうち、研究課題(2)及び(3)は順調に進み、研究成果の一部を国際学会で発表した。さらに研究成果を広く公開するために、論文投稿などによる公表が必要であるが、この点は今後行う予定である。 また、研究課題(1)はやや遅れている。研究実績の概要でも述べたように、目安はついているものの、確証を得てから報告する必要があると考えているからである。この研究課題についても、結果が出次第、公表が必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の新たな研究課題として「橋渡し的構文としての「無生物主語構文」の創発の仕組みの解明」に取りかかる。また、これと並行して、平成29年度中に終えるはずだったやや遅れいてる研究課題(1)については、研究を速やかに遂行し、成果をまとめられるように努める。研究成果が上がっている研究課題(2), (3)についは、より広く成果を公表できるよう務める。
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Causes of Carryover |
研究計画の若干の遅れに伴い、当該年度の経費を次年度使用額として繰越すこととなった。この繰越し金はやや遅れている研究計画の遂行のために使用する予定である。 また、次年度分として請求した助成金は、主として次年度の研究計画の遂行のために使用する計画である。
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Research Products
(1 results)