2018 Fiscal Year Research-status Report
使用依拠モデルに基づく萌芽的構文・橋渡し的構文の創発に関する文法研究
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17K18037
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
對馬 康博 藤女子大学, 文学部, 准教授 (50583093)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 認知操作 / 構文ネットワーク / 構文の創発 / 構文的家族体 / 橋渡し的構文 / 隠喩 / 換喩 / フレーム知識 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は研究課題として、橋渡し的構文としての「無生物主語構文」を考察対象とし、創発の仕組みの解明を中心に行った。本年度の研究計画として、(1)構文ネットワークの観点から、使役構文から無生物主語構文を経てセッティング主語構文までが勾配を示す連続体であることを実証すること、(2)これらの構文の仮定される創発順序にしたがって、無生物主語構文の創発のプロセスはどのような認知操作によって動機付けられているのかを明らかにすること、以上2点の解明を目指した。 本年度の研究成果は以下の通りである。研究計画(1)について、無生物主語構文は使役構文とセッティング主語構文の間を結ぶ「橋渡し的構文」として機能することが明らかとなり、これら3つの構文は1つの「構文的家族体」を形成していることも明らかとなった。この成果の一部は10th International Conference on Construction Grammar(第10回国際構文文法会議)の研究発表にて公表し、その後、加筆・修正をして論文化し、国内の研究書の論文として投稿中である。他方、研究計画(2)について、これら3つの構文は複数の部分からなる概略的フレーム知識を共有しつつも、構文ごとに活性化させる部分が少しずつ異なることで、構文ネットワーク上、連続したカテゴリーを形成しているが、無生物主語構文はこの活性度に関して「隠喩」や「換喩」という認知操作が関与することで創発したものであることが明らかとなった。この成果の一部は日本認知言語学会第19回全国大会の研究発表にて公表し、その後、加筆・修正をして論文化し、同学会の論文集に投稿、印刷中である。 また、前年度の研究として、主題非明示型結果構文の初出時期の特定が遅れていたが、本年度の調査により明らかとなった。この成果は国内学会の雑誌(査読付き)に投稿し、平成31年3月に公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも報告した当該年度の2点の研究計画は、おおむね順調に進展し、研究成果の一部を国際学会、国内学会の研究発表で公表した。また、これらは既に論文として投稿中である。 また、前年度から積み残しとなっていた研究課題は、本年度の研究の遂行により、解明された。これに関する研究成果は平成31年3月に論文として公刊された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究課題の最終年度に当たるため、前年度と本年度の研究成果を基に、萌芽的構文・橋渡し的構文の創発の認知メカニズムについて、使用依拠モデルの観点から構文ネットワークと関連づけて検証し、総括する。この研究成果は国際学会・国内学会での研究発表や論文投稿などを通じて広く公開できるように目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究は順調に遂行され、研究経費も研究遂行のために適正に使用されているが、次年度使用額として242円が生じた。この額は最終年度となる次年度の研究遂行の物品費として使用することを計画している。
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Research Products
(3 results)