2017 Fiscal Year Research-status Report
幼児期の遊びにおける学習プロセスの構造化に関する研究
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17K18056
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
内田 祥子 高崎健康福祉大学, 人間発達学部, 講師 (60461696)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幼児 / 遊び / 探索 / プロジェクト / プレイショップ / 就学前教育 / ポストモダン / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
①予備調査の実施:2017年9月に札幌市にある私立幼稚園にて、予備調査をおこなった。研究計画に基づき、子どもの自発性を重視したプロジェクト型のプレイショップ(遊びのワークショップ)を設定し、遊びにおける幼児の探索活動の特徴および、幼児の探索(exploration)を媒介する保育者の援助や記録の在り方について検討をおこなった。 ②研究計画の立案に先立ち、スウェーデンで広がりを見せるレッジョ・アプローチの動向に関して文献整理を行い、論文にまとめた(「スウェーデンにおけるナショナル・カリキュラムとの比較にみる新幼稚園教育要領の課題」健康福祉研究 2017)。またプレイショップの保育者養成における意義を石黒広明編 『街に出る劇場:社会的包摂活動としての演劇と教育』(新曜社)の7章に「幼児との劇遊びで保育者になる」というテーマでまとめた。この著書は2018年前半に出版予定である。 ③スウェーデンの研究者との研究交流および国際シンポジウムの開催:2017年10月にスウェーデンのヨンチョンピン 大学 准教授であるMonica Nilssen氏と「国際児童青少年舞台芸術協会」に所属する子ども劇の演出家Bernt Hoglund氏を立教大学に招聘し、国際シンポジウム「ポストモダンからみたスウェーデンの就学前教育における学習、遊び、アート」を開催し、司会を務めた。 ④Monica Nilssen氏とBernt Hoglund氏を高崎健康福祉大学に招聘し、①の予備調査で実施したプレイショップに関するデータセッションをおこない、研究交流を深めた。 ⑤幼稚園の視察:子どもの自発性を重視したプロジェクト型保育を実践している和光幼稚園にて視察をおこない、現場の教員と研究交流および情報交換をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備調査が予定通りに実施され、本調査に向けての手がかりを得ることができ、理論化に向けての一歩を踏み出すことができた。具体的には、ドキュメンテーションと呼ばれるデータの客観性を重視した記録方法が媒介することにより、保育者の子ども理解が深化していく過程を見出すことができた。ドキュメンテーションは子どもの探索過程を参加者間で共有し視覚化することのできるツールであり、子どもの探索に対する多様な解釈、声を響かせる広場として機能していることが確認された。 また、プレイショップは当該幼稚園では、新人研修の場としても位置づいており、現場の保育者や将来保育者を志す学生スタッフにも成果を還元する場となり高い評価を得ることができた。 さらにスウェーデンに代表されるポストモダンの立場からの就学前の教育の在り方について、国際シンポジウムやデータセッションの実施を通じて議論を深め、今後の課題を確認することができた。特に、スウェーデンにおける民主主義に対する意識の高さが、独自の保育アプローチを生み出す基盤になっていることが確認された。 同時に、これまでの実践研究の意義を論文化したり、学会で報告することによって、プレイショップ実践の理論的な枠組みを明確化し、整理を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、今年度は予備調査を実施した私立幼稚園にて本調査を実施する予定である。調査はアクションリサーチ型で実施し、幼稚園の保育者と協働しながら、ドキュメンテーションと呼ばれる記録を媒介とした、幼児の遊びにおける学習過程の構造化に関して知見を得ることを目的とする。また今年度開催される学会や学会誌等で積極的に成果を報告するとともに、北欧やアメリカの研究者と活発に研究交流をはかり、情報を収集する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度の成果報告を目的とした学会への大会参加費の支出や、今年度の本調査実施における準備に必要な文献等購入の支出により次年度使用額が生じた。
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