2017 Fiscal Year Research-status Report
メタボロミクスの観点からみた核医学分子イメージングによる腎腫瘍画像診断の検討
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17K18062
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
城武 卓 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10528805)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腎腫瘍 / メタボロミクス / 核医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、腫瘍組織内のエネルギー代謝異常の可視化が可能な分子イメージングを用いてメタボロミクスの観点から腎腫瘍の新たな鑑別診断方法について検討することである。 対象症例は鑑別困難な腎腫瘍である。対象症例を選択後、核医学分子イメージング(18F-FDG PET/CT(解糖系異常の探索)および99mTc-MIBI SPECT/CT検査(ミトコンドリア機能異常の探索)を行い、腫瘍内のSUV(standardized uptake value)を定量し、切除検体の病理組織診断、悪性度、およびメタボローム解析を行いそれらを比較検討する。しかしながら、目標症例数は50例であるにもかかわらず、当該年度の症例登録は4例のみであった。 本研究の進捗状況の遅れから、転移性腎癌の分子生物学的検討を行った。同じ転移性腎癌であってもリスク分類によるfavorable群とpoor群の予後は全く異なる。その理由のひとつとして、治療抵抗性に関する腎癌組織の遺伝子発現プロファイルの差異が関与すると考えられる。当院において腎摘除もしくは腎部分切除が施行された転移性腎癌の切除検体のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を用いたマイクロアレイ解析を行い、tumor necrosis factor alpha-induced protein 3 (TNFAIP3)、joining chain of multimeric IgA and IgM (JCHAIN)、cyclin-dependent kinase 7 (CDK7)、developmentally regulated GTP binding protein 1 (DRG1)、glutamate receptor, ionotropic, AMPA4 (GRIA4)の5因子がfavorable群とpoor群の間で有意な発現差異を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年、小径腎腫瘍に対する治療が急速に変化したことが原因のひとつと考えられる。 2016年4月に腎癌に対してロボット支援による腎部分切除術が保険収載され、小径腎癌に対する非侵襲的治療として期待されている。多くの施設でロボット支援手術が行われるようになる中、当センターではいまだ導入されていない。 当センターの初診患者は全例紹介によるものである。先述した背景から、当センターに紹介される小径腎腫瘍の症例は減少傾向である一方、限局進行性もしくは転移性腎癌患者が増加している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も新規の登録症例が少ない可能性がある。引き続き、適格症例を広く公募する。 目標症例数に到達せず、十分な検討を行えないことが予想される。そこで、今まで当センターで腎摘術が施行された約600例の摘出検体を用いて小径腎癌や転移性腎癌の生物学的特性についてとくにメタボロミクスの観点から後方視的に検討を加える。 (1)小径腎癌は数%に診断時転移もしくは術後転移再発を認めることが知られている。われわれのコホートにおいても類似した結果が得られており、興味深いことに多くの症例で骨転移を有していた。小径腎癌の中でも全く異なる生物学的特性を有する症例が存在することが示唆される。腎癌診療において小径腎癌に対する治療が急速に低侵襲化する中で、高悪性度の小径腎癌の分子生物学的基盤を解明する意義はきわめて大きい。そこで、当院で外科的治療が施行された小径腎癌を対象とし、切除検体のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を用いて免疫組織学的検査やマイクロアレイ解析などの分子生物学的検討を行い、さらに臨床的因子(患者背景および採血や画像検査を含めた各種検査所見、病理学的所見、病勢進行・癌死・生存の有無)との関連を後ろ向きに検討する。 (2)転移性腎癌に対する既知のリスクモデルはいくつかの臨床因子を用いた有用な予後予測モデルであるが、一方で分子生物学的根拠に欠けている。上記と同様の技法でリスク群別の転移性腎癌の分子生物学的基盤について検討し、予後予測バイオマーカーや治療標的因子を探索する。
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Causes of Carryover |
主たる本研究経費は99mTc-MIBI SPECT/CTの試薬(40,000円/1本x目標症例50例)である。しかし適格症例が目標症例数に到達しなかったこと、そして本試薬費用を当院の核医学科が一部負担したことが大きな原因と考える。 引き続き適格症例を公募するとともに、同時進行で行っている転移性腎細胞癌の分子生物学的解析(メタボローム解析やマイクロアレイ法など)にこれらの費用を当てる。
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