2017 Fiscal Year Research-status Report
自家蛍光を用いた未染色病理標本のデジタル染色・定量化法の開発
Project/Area Number |
17K18064
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
石川 雅浩 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (70540417)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | デジタル染色 / 自家蛍光 / HE染色 / 深層学習 / 位置合わせ |
Outline of Annual Research Achievements |
自家蛍光画像のデジタル染色の実現に関して,励起光による自家蛍光特性の違いの調査検討,自家蛍光画像からのデジタル染色の実装を行った.自家蛍光特性の調査に関しては,Hyper Spectral(HS)カメラの感度を向上し,自家蛍光のスペクトル情報を撮影可能にした.また,研究室で保有する複数の励起光フィルタを用いて実験を行い,励起光によって自家蛍光特性が変化するか調査した.実験により,これまでよりもより自家蛍光の撮影に適した励起光とカメラ側フィルタの特性が判明した.一方,得られた自家蛍光画像からデジタル染色を実現するため,自然な染色方法についての検討を行った.まず,デジタル染色に使用する自家蛍光画像と教師画像(HE染色画像)を蛍光・可視顕微鏡で撮影し,2枚の画像の位置合わせを行った.位置合わせにはSURFの特徴点を用いた剛体変換を適用した.非線形な位置合わせについても検討したが非線形補正時に発生する歪み部分の補間などによって画像に平滑化が生じてしまうため剛体変換を採用することとした.次に,Massive training artificial neural network(MTANN)を用いた推定を行った.単純なMTANNでは良好な結果が得られなかったため,Anatomy-specific法に基づいてMulti-MTANNを構築した.Multi-MTANNを使用した結果,自家蛍光画像からのHE染色画像の青面画像の推定において色差6.9という結果が得られた.しかし,細胞質領域の色差が6.0であるの対して、細胞核領域は19.1と色差が大きいという課題が残され,推定に用いる自家蛍光画像の再検討と本研究により適したMTANNの適用方法の検討の必要性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,自家蛍光の特性を調査し,自家蛍光画像からのデジタル染色を可能とした.まず,自家蛍光の特性を調査するために,Hyper Spectralカメラを用いる方法を考案し,励起光によって発生する微弱な蛍光の特性の調査が可能となった.また,実際に励起光を変更しながらHS画像を撮影することで蛍光特性のピークとピーク波長の広さも明らかとなった.次に,自家蛍光画像のデジタル染色として,まず自家蛍光画像と染色画像の位置合わせを,SURFを用いて実現した.最後に,MTANNを用いて特に細胞質領域は非常に高精度にデジタル染色可能なことを確認した.特に,重回帰分析等を用いた従来法と比べて視覚評価においても大きな改善が確認できる.また,デジタル染色の結果から,位置合わせについては今回開発したSURF特徴点に基づく剛体変換で十分な精度が得られていることも確認された.これらのことから,概ね順調に進捗していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究成果の活用法としては,病理診断を行う際に染色工程を必要とせずに組織を観察可能とすることを想定している.そのため,色差による再現性の評価に加えて病理医が観察時に有効な手法かという点が重要な課題となる.そのため,ある程度手法の再現性が確認できた時点で病理医による意見調査が必要である.直近の課題として,自家蛍光画像中の細胞核の抽出や強調が必要である.MTANNの応用法として様々な手法が提案されており,これらの手法の病理画像への適用や新たなアプローチ法の開発などを通して,細胞核の抽出を第一に進める.加えて,今年度検討した自家蛍光特性を考慮してより細胞核の情報を含んだ自家蛍光画像の取得を行い,デジタル染色の再現向上についても検討を進める.加えて,現在は小さい範囲の画像で検討を進めているが,適用する画像の範囲や標本数を変更することで,手法の汎用性についても評価を行うことを計画している.また,当初の予定通りデジタル染色の対象となる染色方法についても範囲を広げて検討を行う.特に,これまで分かった情報として自家蛍光画像は細胞核の情報が少ないが,他の組織については十分に情報が含まれているため,MT染色やEVG染色に効果的なことが期待される.
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Causes of Carryover |
今年度は、微弱な自家蛍光を撮影するためにHSカメラの感度向上に助成金を使用した.その際に、想定よりも値引きが生じたため差額は発生した.差額分については,来年度の標本購入費等に使用する予定である.
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