2017 Fiscal Year Research-status Report
敗血症の新たな治療薬の開発;骨格筋におけるタンパク質のファルネシル化に着眼して
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17K18084
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
中澤 春政 杏林大学, 医学部, 助教 (10458888)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 敗血症 / ミトコンドリア障害 / ファルネシル化 / ファルネシル変換酵素阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、重症病態におけるミトコンドリア機能障害の機序とそれに対するファルネシル化変換酵素阻害薬(FTI-277)の効果を解明することである。まず我々が 行ったのは、重症熱傷モデルを作成し、熱傷による骨格筋のミトコンドリアの形態の変化を電子顕微鏡を用いて観察した。熱傷モデルマウスの腹直筋では、巨大化し、Cristae構造の欠落したミトコンドリアが観察された。熱傷後よりFTI-277(5mg/kg、IP)を投与したマウスでは、熱傷に伴うミトコンドリアの形態異常は減弱されることを示した(Nakazawa.Sci Rep. 2017 Jul 26;7:6618)。この研究ではさらに、ミトコンドリア機能障害の発生機序として、HIF-1αやPKM2といった蛋白質の発現が増加していることから、組織の低酸素症が関与していることがわかった。また、この低酸素血症は酸素の供給不足ではなく酸素の利用障害(いわば偽性低酸素血症)が原因でおこることが推測された。また、この研究により、熱傷に伴うミトコンドリア障害に対してFTI-277が保護的な作用を示すことが証明できた。また、この実験において、FTI-277投与の安全性に関してもある程度証明することができた。 次に、敗血症におけるFTI-277の効果を検討するために、cecum ligation and puncture(CLP)モデルマウスを作成した。本実験ではsurvival modelが必要となるため、CLP施行後の体重減少が20%以下となるように、虫垂を結紮する部位や穿孔させる穴の大きさを変化させることでことで敗血症の重症度を調節した。虫垂の盲端から1㎝の部位を結紮し、21G針で穿孔部を作ることで、安定した敗血症モデルマウスの作成に成功した。 安定した敗血症モデル作成に成功したことで、今後の実験では敗血症に合併するミトコンドリア機能障害に対するFTI-277の効果を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、今年度中に敗血症モデルマウスのミトコンドリア機能障害の機序に関して、科学的な検討を行うことを目標としていた。しかし、敗血症モデルマウスの作成に予想以上に時間がかかった点と、熱傷モデルに伴うミトコンドリア機能障害へのFTI-277の効果を再度検証する実験を行ったため、当初の予定よりはやや遅れている。 しかし、安定した敗血症モデルの作成に成功し、今後速やかに敗血症に対するFTI-277の効果の検証実験を開始できるため、実験の遅れは取り戻せるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況は当初の予定と比較してやや遅れてはいるものの、おおむね順調であると考えている。すでに、研究費を用いた実験において論文報告もできており、今後もこのまま進行させていきたい。
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Causes of Carryover |
当初の予定と比較して実験の進行が遅れているため、次年度使用額が生じた。しかし、今年度からは本実験に移行できる部分が多くなるため、使用額が多くなることが予想される。 具体的には、蛋白検出に使用する抗体やPCR用のプライマー、またELISAのKit等の購入が必要となる。
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Research Products
(2 results)