2018 Fiscal Year Research-status Report
敗血症の新たな治療薬の開発;骨格筋におけるタンパク質のファルネシル化に着眼して
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17K18084
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
中澤 春政 杏林大学, 医学部, 講師 (10458888)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 敗血症 / ミトコンドリア障害 / ファルネシル化 / ファルネシル化変換酵素阻害薬 / ミトコンドリアDNA / DAMPs |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、重症敗血症における骨格筋でのミトコンドリア機能障害の発生機序とそれに対するファルネシル化変換酵素阻害薬(FTI)の効果を解明する事である。 それらを明らかにするための実験モデルとして、マウスのcecum ligation and puncture(CLP)モデルを用いた。シャムマウスと敗血症マウスの腹直筋及びヒラメ筋を電子顕微鏡で観察したところ、敗血症マウスでは明らかに形態異常(cristae構造の崩壊や巨大化)のあるミトコンドリアを観察することができた。また、敗血症マウスではシャムマウスと比較して、血中HMGB-1とミトコンドリアDNAの上昇を認めた。HMGB-1はDAMPs(aamage-associated molecular patterns)の一種として全身炎症反応を惹起する因子であると言われているが、近年血中に循環するミトコンドリアDNAもDAMPsとして炎症反応の波及に関与すると報告されている。我々のこれまでの実験結果より、敗血症刺激によって骨格筋のミトコンドリア機能障害がおき、破壊されたミトコンドリア内のミトコンドリアDNAが血中に流れ出て、DAMPsとして働き炎症反応を全身に波及させるのではないかと推測される。 我々は過去の研究において、熱傷モデルマウスにおいて、FTIの投与は骨格筋のミトコンドリア機能を改善させることを示しており(Nakazawa.Sci Rep. 2017 Jul 26;7:6618)、同様の効果が敗血症マウスにおいても期待される。今後は敗血症マウスにFTIを投与することで、FTIが敗血症マウスにおいてもミトコンドリアの形態異常を抑制し、血中ミトコンドリアDNAの増加を予防することかどうか解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の実験計画では、2年間で敗血症マウスのミトコンドリア機能障害に対するFTIの効果を解析するはずであったが、本研究に最適なCLPモデルマウスを作成するのみ時間を要したため、若干の遅れがある。 しかし、CLPモデル作成後は順調に研究計画を遂行できており、延長させていただいた期間内実験は終了すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定としては、敗血症マウスにFTIを投与し、ミトコンドリアの形態変化や血中ミトコンドリアDNAへの影響を解析していく。 現在、シャムマウス、敗血症マウスそれぞれに対してFTI投与群、非投与群の4群間でサンプル採取は出来ており、電子顕微鏡での観察および血中のDAMPs、ミトコンドリアDNA、乳酸値の測定を行う予定である。 その後は、筋肉のサンプルを用いて蛋白質の定量解析を行う方針である。
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Causes of Carryover |
実験モデル作成に当初の予定より時間を要したため、2年間では予定した実験を完遂できなかった。そのため、残額が生じている。 今後の実験は予定通り遂行できるため、予定していた助成金を試薬代・解析外注代としてすべて使用する予定である。
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Research Products
(1 results)