2017 Fiscal Year Research-status Report
霊長類のMRI脳区分マップに基づくヒトの脳構造の進化・発達過程の統合的理解
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17K18097
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
酒井 朋子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (30640099)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MRI画像解析 / オープンサイエンス / 計算解剖学的手法 / コモンマーモセット / チンパンジー / 脳進化 / 脳発達 / 比較脳解剖イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非ヒト霊長類をモデルとして、脳進化マップ・脳発達マップを構築し、人類進化に伴う各脳領域の経時的変化の定量画像分析を行う。これにより、各脳領域の構造と領域間の構造ネットワークにおけるヒトの特異性を見出し、その発達様式を明らかにすることを目指す。 H29年度は、米国のJohns Hopkins University School of Medicineの森・大石研究室の技術的支援のもと、主に次の三つの研究開発を行った。(1)京都大学霊長類研究所のチンパンジーの脳MRIのデータベース・シスムテムの開発に向けて、データ整理を行った。(2)慶應義塾大学の発達期のマーモセットの脳MRIと用いて、脳区分マップの構築のための予備的検討を行った。(3)日本モンキーセンターが所有する霊長類脳標本を脳MRIのデータベース・システムの開発を行った。まずは、霊長類12種(ピグミーマーモセット、ヨザル、シロガオオマキザル、カニクイザル、ニホンザル、ボンネットマカク、トクモンキー、サイクスモンキー、アカオザル、シュミッドグエノン、ブラッザグエノン、テナガザル)の脳MRIを対象に日本モンセンターより公開する予定である。主な研究成果として、2本の学術論文(Sakai et al., Neuroscience Research, 2017; Sakai et al., PLOSONE, 2017)を出版した。また、2017年10月には、アトランタにて、Georgia State UniversityのLanguage Research Center主催するLANA (Learning from Apes and other Nonhuman Animals--or something similar!) conferenceで、"Development and evolution of human brain: insights from comparative anatomical MRI between chimpanzees and humans"という演題で基調講演を行った。現在、(3)の日本モンキーセンターの霊長類脳標本の脳MRIデータベースに関する論文を投稿し、改稿版の作成をしている(Sakai et al., 投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、チンパンジーおよびマーモセットの脳MRIデータベース・システムの開発・公開に向けての準備を進めることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
脳発達マップ及び脳進化マップの構築を行い、サルからヒトへの進化とともに大きく変容したヒト特異的な脳領域を見出し、その脳領域がどのような発達様式により形成されるのかを検討する。これにより、ヒト特異的な脳領域の構造および領域間の構造ネットワークの進化・発達過程の包括的な理解が進む。
本研究では、霊長類研究所のチンパンジーの脳画像を基にMRI 脳区分マップを構築する。しかしながら、これらの脳画像は低磁場MRI装置での限られた時間での撮像されており、特に成体チンパンジーの脳画像が、画像解析に十分に対応できない画質である可能性も予測される。その場合、NIHのチンパンジー脳データ提供サイト(NCBR: http://www.chimpanzeebrain.org)から、Yerkes National Primate Research Centerで撮像された成体チンパンジーの脳画像を借用することで、MRI 脳区分マップの構築を進める。
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Causes of Carryover |
H29年度は、海外学振特別研究員として、米国の研究機関に所属していたため、国際学会の出張費及び画像解析ソフト資料を必要としなかった。H30年度は帰国し、慶應義塾大学にメインに所属することになったので、上記の費用があらためて請求する予定である。
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