2017 Fiscal Year Research-status Report
モダニズム文学における建築の政治学――「空間」をつくる女性たちの欲望と可能性
Project/Area Number |
17K18101
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菊池 かおり 首都大学東京, 人文科学研究科, 助教 (50793246)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モダニズム建築 / フェミニズム / ジェンダー / ドメスティシティ / 都市空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3年に渡る研究計画の初年度にあたるため、本研究の基盤となる作業として、基礎的・理論的研究の充実を図った。まず、本研究の主な焦点である20世紀前半において活躍した女性作家たちの空間描写に関する文献資料を分析した成果の一部として、日本ヴァージニア・ウルフ協会発行のVirginia Woolf Reviewにて、女性作家と都市空間の関係性について論じられた書籍についての書評を発表した。次に、本研究の核となるテーマの一つである「空間」は、その特質ゆえに抽象的な議論になりがちなため、それを避け、具体的な議論を展開するためには、建築の歴史的・社会的背景と、その建物を設計した建築家やその居住者との関係性についての理解を深める必要性があると判断した。そのため、当初の予定では2年目に重点的に行う予定であった小説家たちの空間描写やその歴史性についての分析を本年度からスタートさせた。その成果の一部として、首都大学東京人文科学研究科発行の「人文学報」にて論文を発表した。その論文では19世紀中産階級の居住空間にみられる社会規律に着目したが、今後は20世紀建築と社会規律の関係性などについてもリサーチを進めていく予定である。さらに、当初予定していた通り、British Librayにて20世紀の建築雑誌Archtiectural Reviewをはじめとした定期刊行物に関する調査も進めることができた。今後、この点についても、リサーチを進めて発表し、その後さらに議論を発展させて論文化する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したアイルランドにおける研究調査のための出張にでかけることはできなかったが、イギリスにおける研究調査においてArchtiectural Reviewをはじめとする定期刊行物の調査を進め、かつ、2年目に開始する予定だった小説分析の一部を進めることができたため、リサーチの順序に前後はあるものの、研究はおおむね順調に進展していると言えるだろう。また、資料の収集と分析も順調に進めることができており、今後発表する準備も順調に進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、イギリスなどの図書館で定期刊行物などに関する調査をすすめるとともに、女性作家の作品における建築描写を通して、彼女たちの空間に対するアプローチを研究する。その際、当時の女性インテリア・デザイナーや建築家の空間へのアプローチとの比較検討を行う予定であるが、建築と文学という領域の違いを念頭に彼女たちの活動を分析するのではなく、脱領域的に、それぞれの社会的・文化的条件を考慮に入れて分析する。そうすることで、彼女たちの空間に対するアプローチそのものが含蓄する社会的・文化的意義に光を当てることを試みるつもりである。
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Causes of Carryover |
2017年度は、私的理由(家族の病気)により、夏期にアイルランドにリサーチ出張に出かけることが出来なかった。それが「次年度使用額(B-A)」が生じた主な理由である。
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