2017 Fiscal Year Research-status Report
Cross-linguistic investigation of nominal structure
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17K18106
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
猪熊 作巳 実践女子大学, 文学部, 准教授 (90711341)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 固有名詞 / 統語理論 / 名詞句構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年の極小主義的・進化生物言語学的アプローチに基づき、通言語的資料を対象とし、特に名詞句がもつ統語構造とその意味解釈を解明することを目的とするものである。具体的には、代名詞、固有名詞、語彙名詞の三種について、その形態・語形成的側面、統語的側面、意味的側面それぞれの詳細な比較検討を行なう。 平成29年度は、上記三種の名詞句のうち、特に固有名詞についての調査を進めた。従来、固有名詞に関する研究は理論言語学的枠組みよりもむしろ言語哲学的、あるいは心理言語学的な枠組みのもとでおこなわれることが多かった。このため、まず第一にこれら隣接領域に属する研究の文献収集とその議論の分析、整理を進めた。 固有名詞の意味解釈については、言語哲学史上大きくわけて二つの提案―がなされている。 一つはRusselやSearleに代表される、固有名詞は記述的意味を持つ、とする立場、もう一つはMillやKripkeに代表される、固有名詞は記述的意味を持たない、とする立場である。これら二つの仮説の妥当性について統語分析的な観点から評価した研究は少ないが、概略、前者は固有名詞を他の語彙名詞と同様にN(oun)とみなす方向を示し、後者は固有名詞を冠詞や指示詞のようなD(etermienr)要素ととらえる方向を示す。 平成29年度の研究では、固有名詞の基本的な性質を整理したうえで、固有名詞の前者を支持するMatushansky(2006など)と、後者を支持するHinzen(2016)の提案を比較し、両者を整合性のあるかたちで統語理論に昇華する分析素案を提出した。この結果は、海外出版社から刊行予定のハンドブックの1章として、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献収集とその評価、データ収集とその整理、これらに基づいた分析素案の構築を進めた。総説論文は現在査読段階まで進んだものの、分析素案の立案に時間がかかったため、公表に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
固有名詞の分析については、査読結果を待ってその修正、発展を進める。固有名詞の分析の結果として明らかになった、他の名詞類、特に代名詞の分析案の構築について、平成30年度は進める予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定にしていた物品の納品が遅れたため、18529円の差額が生じた。これについては平成30年度以降、入手され次第計画に組み込むこととする。
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