2018 Fiscal Year Research-status Report
窒化物半導体/金属を用いたハイブリッドナノ構造の光物性探索と光電子デバイス応用
Project/Area Number |
17K18110
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大音 隆男 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (20749931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラズモニック結晶 / ナノコラム / 表面プラズモン / 窒化物半導体 / 発光デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新しい光機能性を付加した窒化物半導体系光電子デバイスの実現に向けて,窒化物半導体/金属ハイブリッド周期ナノ構造であるナノコラムプラズモニック結晶を作製し,その光学特性評価およびデバイス化に向けて研究を進めている.平成30年度は,特に発光効率が低い橙~赤色領域において,ナノコラムプラズモニック結晶導入による発光効率の大幅な改善を目指して,その発光増強メカニズムに関する研究を推進した.平成30年度に得られた主な研究実績を以下に記す. ① InGaN/GaNナノコラムプラズモニック結晶の発光/プラズモニック特性評価 ナノコラムプラズモニック結晶の発光特性・プラズモニック特性を理解することは,表面プラズモンを用いた発光デバイスの高出力化・多機能化に必要である.プラズモニック結晶導入により,新たなピークが出現するなど大きく発光スペクトルが変化することがわかった.同構造においてFDTD(有限差分時間領域)法による電磁界シミュレーションを用いて,金/誘電体界面の電界強度の波長依存性を計算した.発光増強スペクトルはFDTDで計算した電界強度の波長依存性で再現し,プラズモニックバンド端と電界強度が相関を持つことが明らかになった.光と結合しない表面プラズモンモードも観測されたことから,表面プラズモンモードを理解した構造設計が重要である. ② 高効率プラズモニックLEDの実現に向けたプラズモニックナノ構造の提案 デバイス化や結晶上部からの光励起が可能な金属ナノディスク構造を提案して評価を行った. 高効率な赤色LEDを目指した金ナノディスク構造においても,従来のナノコラムプラズモニック結晶と同程度の大きさの電界強度が発生し,発光波長はコラム径・周期によって制御できることがわかった.また,従来の構造で観測できなかった強い電界が短波側に出現し,励起光と発光を共に増強できる可能性を見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,以下に示すように,申請書に記した計画がおおむね順調に進展している.なお,本研究は上智大学でスタートしたが,2017年10月からは山形大学に移って研究を実施している.研究場所や環境の変化に伴い,一時的に研究の実施が滞ったが,研究内容の進捗には大きな影響はないと考えている.
① 表面プラズモンの各準位における内部量子効率の評価を行うために,研究代表者の過去の研究を発展させ,レート方程式を用いたキャリアダイナミクスの解析を実施した.この方法を用いることで,実験値から一意に各寿命を解析できる.InGaN/GaNナノコラムは自発的にcore-shell構造を取るが,橙色発光のcore領域において,50%を超える内部量子効率が達成できていることが分かった.より詳細に慎重な検討を進める必要であるが,ナノコラムプラズモニック結晶のポテンシャルの高さを示す結果が得られたと考えている. ② FDTDシミュレーションと平面波展開法によるバンド計算を組み合わせて評価することにより,プラズモニック特性の評価を進めた.その結果,FDTDで計算した電界強度の波長依存性で再現し,プラズモニックバンド端と電界強度が相関を持つことが明らかになった.表面プラズモンのモードを調査し,光と結合する表面プラズモンモードを理解した構造設計が重要である. ③ 高効率な赤色プラズモニックLEDの実現を目指して,電流注入が可能なプラズモニックナノ構造を提案して評価を行った.すでに,三角格子配列InGaN/GaNナノコラムにプラズモニック結晶を導入することで,橙色で最大で5.2倍,赤色領域で最大3.8倍の発光増強を達成しているが,電流注入できるナノlコラムトップを露出した金属ナノディスク構造を提案し,従来のナノコラムプラズモニック結晶と同様の電界強度と波長制御性が実現できることを明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
① 引き続き,窒化物半導体からの赤色発光のさらなる発光増強や発光効率の向上を目指す.現状では,プロセスの再現性が不十分であり,さらなる改善が必要であると考えている.プラズモニック結晶において,発光層と金属/半導体界面の距離の制御が非常に重要であるので,発光増強が顕著に起こる膜厚を最適化したい. ② 高効率な窒化物半導体プラズモニックLEDの実現にむけて,ナノコラムトップを露出した電流注入型のプラズモニックナノ構造の作製を進めて評価する.シミュレーションによる構造の最適化はすでに終わっているので,その設計指針を基にLED構造を作製したい.LEDの作製後は,電流注入化で光学特性の評価を行い,プラズモニック効果について評価する. ③ 窒化物半導体系の発光デバイスにおいて,新たな光機能性を発現するために,プラズモニックメタサーフェスやプラズモニックメタマテリアル応用を目指す.ナノコラムプラズモニック結晶において,発光増強率の角度依存性を利用した光の出射方向の制御など,特異な光学応答の変化を詳細に探求する.
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Research Products
(12 results)