2018 Fiscal Year Research-status Report
がん免疫逃避環境を改善しうる新規受容体指向性サイトカインの創製とがん治療への応用
Project/Area Number |
17K18115
|
Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
野村 鉄也 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (40582854)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | TNF / ファージディスプレイ法 / TNFR2 / MDSC / Treg / 免疫逃避機構 / がん免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん免疫療法をより効果的な治療法として開発する上での問題点として考えられている免疫逃避機構に着目し、その中心的な役割を果たすことが知られているミエロイド由来抑制性細胞(MDSC)や制御性T細胞(Treg)による免疫抑制作用を阻害しうる治療薬の開発を目指して研究を行っている。特に、これら免疫抑制細胞の機能発現に関与することが明らかとなっている腫瘍壊死因子(TNF)の2種類のレセプター(TNFR1およびTNFR2)を介した作用のうち、がん微小環境における免疫逃避機構に中心的な役割を果たすTNFR2の作用を選択的に阻害することができるTNFR2結合選択的アンタゴニストの創出を目的として検討を行っている。 本年度は、前年度にTNFのレセプターとの結合領域9つのアミノ酸を網羅的に他のアミノ酸に置換することで開発した1億種類ものTNF構造変異体ファージライブラリの中から得られたTNFR2結合選択的アンタゴニスト候補クローンの各レセプターを介した詳細な結合特性・生物活性を評価するために、大腸菌を用いた精製タンパク質の精製法の開発を行った。具体的には、ヒスチジンタグをC末端に挿入したタンパク質発現ベクターへの遺伝子組み換えを行い、アフィニティー精製法を用いたタンパク質発現・精製条件の最適化を行うことができた。また、精製された候補クローンを用いてMDSCやTregのもつ免疫抑制作用に対する阻害活性を評価するために、脾臓または骨髄細胞よりTregやMDSCの分離や分化誘導を行い、TNF作用によるTNFR2を介したTregやMDSCの増殖に関する評価系の構築にも成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
担がんマウスを用いたin vivoでの投与実験を遂行することを念頭にして、精製可能なタンパク質量を増加させることを目的として、当初予定していた精製法とは異なる手法を試みることにしたため、新たなプラスミドのコンストラクトの構築、ならびにタンパク質発現条件の再検討を行った。そのため、予定してた実験の進捗に遅れが生じたので、当初の予定よりはやや遅れが生じている。しかしながら、最終年度に予定していた免疫抑制作用を評価する実験系については2018年度に一部評価系を構築できたこと、またTNFR2結合選択的アンタゴニストのin vitroでの生物活性評価法については初年度に用いた実験系と同様の手法で行うため、最終的には当初の予定を遂行することができると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、TNFR2結合選択的アンタゴニスト候補クローンの精製タンパク質を用いて上記実験系を用いたin vitroにおける免疫抑制作用に対する阻害活性を評価するとともに、担がんマウスに対する抗腫瘍効果などのin vivoの検討を順次進めていく予定である。具体的には2018年度に確立したTNF変異体タンパク質精製法を用いて、TNFR2結合選択的アンタゴニスト候補クローンを精製し、各TNFレセプターへの結合親和性を表面プラズモン共鳴法を用いて評価する。また、各レセプターを介した生物活性をレセプター発現細胞への細胞傷害活性を指標に評価する。その後、2018年度に同様にして構築したMDSCやTregの免疫抑制作用に対する阻害活性の評価系を用いて、TNFR2結合選択的アンタゴニストの有効性を明らかにする。さらに、担がんマウスに対する抗腫瘍効果を検討するため、ポリエチレングリコールを用いたバイオコンジュゲーション技術を駆使し、タンパク質の血中滞留性の向上をはかる。血中滞留性の向上したTNFR2結合選択的アンタゴニストを担がんマウスへと投与することによって、がん微小環境の免疫逃避機構を打破することによる抗腫瘍効果を検討する。
|
Causes of Carryover |
当該年度において、実験の進捗状況にあわせて次年度使用予定額の一部を前倒し支払い請求を行った。前倒し請求額の残りは翌年度分として請求した助成金とあわせて使用する予定である。なお次年度は、タンパク質精製のための試薬や遺伝子組み換えに関する試薬、動物実験に関する消耗品や試薬に予算を使用し、研究の成果を学会で発表する際の旅費などにも使用する予定である。
|