2021 Fiscal Year Research-status Report
Robert Marjloin's idea for European Monetary Cooperation: Tactical change to 'Neo-Liberalism'
Project/Area Number |
17K18118
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
工藤 芽衣 帝京大学, 経済学部, 講師 (70433878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新自由主義 / ロベール・マルジョラン / 通貨協力 / 経済通貨同盟 / フラン切り下げ / 欧州統合 / フランス / 1950年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1950~1960年代にかけヨーロッパの新自由主義者がヨーロッパ統合へどのように関わったのかを一次史料に依拠して実証することである。本研究で主な分析対象となるのは、フランス出身の欧州官僚として知られているロベール・マルジョランである。従来、ケインズ主義者として知られるマルジョランであるが、フラン切り下げ問題やEEC通貨協力を議論する中で、新自由主義的な姿勢も見られる。そこで本研究では、まずはマルジョランの新自由主義者としての側面を明らかにし、その上でEECに対するマルジョランの諸提案を取り上げている。2021年度は以下の問題を中心に研究を進めた。 2021年度は、EEC加盟後のフランスの国際収支赤字問題に対して、EECの既存の条項での対応がでは不十分であることを受け、EECの中で通貨金融協力を発展させることを意図した1958年の二つの構想を分析した。そして、二つの構想に見られた通貨協力の方法が、マルジョランの後任となる欧州委員バールが後に改めて提案し、広く知られるようになる「パラレリズム」と呼ばれる手法ーすなわち、通貨協力と並行して経済政策の調和も図る方法ーの原型になるようなものであったことを確認した。 以上に関して当初予定していた史料収集で新たに史料を補うことはできなかったが、すでに取得済みの史料の分析や二次文献を通じて考察を深めた。また、関連分野の専門家から助言・意見を得ることができたため、今後の課題を明らかにすることや、研究成果発表に向けた準備を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい史料を収集することはできなかったものの、関連する問題の専門家から意見、助言を受けることができた。また、一次史料分析と二次文献はさらに進んだため、今後、研究成果を発表するための準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度の成果を踏まえながら、次のような点に特に焦点を当てる。 50年代後半の通貨協力構想が、60年代初頭に再び取り上げられた際、①EECを取り巻く国際環境・内部環境がどのように変化していたか、②マルジョランと同じ考え方をもつ欧州官僚にはどのような人物がおり、どのような思想的背景を持っていたか、③新たな提案がどのような形で提案されたか、である。 以上について入手可能な史料、文献をさらに充実させ、かつ関連の専門家からの意見をうけながら、研究発表に向けた準備を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していたフランスでの史料収集が、新型コロナウイルスの影響で海外渡航が困難になったことで実施できなかったため、研究計画を修正する必要が生じたため。史料収集に代わり、一次史料分析や研究成果発表に有益なツールの取得のために残り予算を使用する予定である。
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