2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K18122
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
木下 千智 帝京大学, 医学部, 助教 (10567085)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | miR96 / GTRAP3-18 / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によりグルタチオン量決定に関与するGTRAP3-18におけるmiR96による制御は、GTRAP3-18の RNA結合タンパク質の介在による可能性が示唆された。本研究ではRNA結合タンパク質候補群を同定しその機能を解析することで、実際に中枢神経系におけるグルタチオン量及び神経保護作用を上昇させる治療法の開発を目的としている。現在までに行った研究は以下のとおりである。 得られたRNA結合タンパク質群に対し恣意的なスコアリングを行った。スコアリングの参考値としたのは、タンパク質同定スコア及びmiR96標的スコアである。これらのスコアリングの上位から解析を順次行い、標的タンパク質を絞り込んだ。その結果6個のRNA結合タンパク質群が有力な候補として挙がった。そこでドパミン作動神経細胞であるSH-SY5Y細胞を用いてRNA結合タンパク質群のsiRNAによるノックダウンを行った。結果、あるRNA結合タンパク質はGTRAP3-18タンパク質発現量を増加させることがウェスタンブロッティング解析により明らかになった。またルシフェラーゼリポータージーンアッセイにおいても同様にこのRNA結合タンパク質のノックダウンにより明らかにGTRAP3-18の翻訳量が増加した。また、miR96はこのRNA結合タンパク質発現量を顕著に減少させ、同時にGTRAP3-18の発現量を増加させていた。面白いことに、GTRAP3-18のタンパク質発現量が増加すると共に細胞死が誘発される現象が予備的結果として観察された。これは、GTRAP3-18がグルタチオンの律速物質であるシステインの輸送体であるEAAC1の阻害を行うこととよく一致している。現在、ゲノム編集による遺伝子改変をin vivo及びin vitroにおいて行うための予備試験を行い解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はSH-SY5Y細胞の遺伝子導入効率が懸念材料であったが、siRNA及びmicroRNA特異的な遺伝子導入試薬を用いることで解決された。今後、ゲノム編集実験を行っていくにあたり再び遺伝子導入効率に若干の困難さが予想される。そのための準備を現在から行っている。詳しくは今後の研究推進方策に記述する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに研究は計画通り順調に進んでいる。そのため今後の研究は、概ね計画書通り次のように進める。(1)ドパミン作動性神経細胞in vitroモデルであるSH-SY5Y細胞を用いて、RNA結合タンパク質のmiR96標的配列の欠損が神経保護効果にどのような影響を与えるかを調べる。(2)in vivoにおける新規ゲノム編集法SLENDR法を用いて中脳黒質ドパミン細胞における局所的ゲノム編集を行い、グルタチオン量及び神経保護作用の上昇効果が得られるか検証する。 ゲノム編集実験において懸念されるのは遺伝子導入効率である。そのため、現在遺伝子導入効率の高いエレクトロポーレション法の検討を行っている。これは(2)の実験でも同様に使用できる方法で、予備的実験においては遺伝子導入試薬を用いるより明らかに高い導入効率を得ている。
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Causes of Carryover |
当初予測していたRNA結合タンパク質によるRNAの安定性が予備的試験により否定されたため、BRICアッセイを行う必要がなくなったため、必要試薬の購入をしなかった。今後はRNA安定性以外の可能性、即ち翻訳促進機構、タンパク質相互作用等の新たな実験を計画遂行する予定である。
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