2017 Fiscal Year Research-status Report
待ち行列ネットワークの性能評価に向けた反射型ランダムウォークの漸近解析
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17K18126
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小林 正弘 東海大学, 理学部, 講師 (90609356)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 反射型ランダムウォーク / 待ち行列 / 漸近解析 / 誤差上界 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元反射型ランダムウォークと呼ばれる確率過程がある。これは,2次元ランダムウォークに境界が加わり定義される,2次元非負整数上の確率過程である。2次元反射型ランダムウォークに対して,有限な背後状態を加えた確率過程を一般化2次元反射型ランダムウォークと呼ぶ。平成29年度の研究では,2次元反射型ランダムウォークや一般化2次元反射型ランダムウォークに対して,定常分布の特性を求める研究を行った。これらの研究は待ち行列ネットワークの性能評価において,非常に重要である。 平成29年度における研究業績は2つある。1つは,カナダで行われたIFORS 2017という国際会議において「Error bound for the QBD approximation of a two dimensional reflecting random walk」という研究成果を共同で発表した。概要は2次元反射型ランダムウォークにおいて,定常分布の裾を利用し数値計算と理論値の誤差の上界を陽な形で求めるという研究である。 もう1つは,中国で行われたQTNA2017という査読付き国際会議において「Exact asymptotic formulae of the stationary distribution of a discrete-time two-dimensional QBD process」という研究成果を発表した。概要は一般化2次元反射型ランダムウォークにおいて,定常分布の裾の漸近特性を求める研究である。 2つの研究とも,反射型ランダムウォークの定常分布の特性を求める研究業績であり,理論的な側面から待ち行列ネットワークの性能評価に役立てることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では,2つの結果を導出した。1つは,2次元反射型ランダムウォークにおいて定常分布の誤差上界を求める研究である。この研究は,定常分布の数値計算と理論値の誤差上界を求めている。待ち行列ネットワークにおいて,定常分布が求まらないモデルも多く,そのような場合近似モデルを考え,近似モデルで定常分布の数値計算を行う場合がある。本研究によって,近似モデルの数値計算と理論値の定常分布の差を求めることができるため,近似モデルの定常分布を求めることがどの程度有用であるか理論的に確認することができる。 2つめの研究は,一般化2次元反射型ランダムウォークの定常分布の漸近解析を行っている。漸近解析とは,極限がどのような関数と一致するか理論的に求めることであり,漸近解析を行うことによって得られた定常分布の漸近特性は希少な確率の近似解となっている。待ち行列理論においては,大きな混雑が起こる確率を近似することができ,この大きな混雑が起こる確率は待ち行列ネットワークの性能評価の指標の1つとなる。 この2つの研究により,待ち行列ネットワークの性能評価に関して理論的な指標を求めることができた。引き続き,待ち行列ネットワークの性能評価のための指標について理論面から研究を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度と同様に,反射型ランダムウォークの定常分布をの特性を理論的に求め,待ち行列ネットワークの性能評価のため指標を導出する。 現在,国際会議QTNA2017で発表した「Exact asymptotic formulae of the stationary distribution of a discrete-time two-dimensional QBD process」に関して,現在論文を共同研究者と執筆中である。今年度中にこの論文を完成させる予定である。 さらに,2次元反射型ランダムウォークについて,その定常分布の積率母関数の収束領域の導出を行う予定である。これは,既に私と共同研究者の論文で,収束領域の導出は行われているが,その証明方法では3次元以上の反射型ランダムウォークに適用が期待できないことが分かった。つまり,3次元以上にも適用させるための収束領域に関する別証明が必要である。現在別証明に関しては,証明を完成させ論文を執筆中である。この別証明は,3次元以上の反射型ランダムウォークについても拡張が期待される。
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Causes of Carryover |
平成29年度において,数値計算用のパソコンを新たに購入する予定であったが,それを見送ったことが原因である。平成30年度にパソコンを購入する予定とし,それを加えることによって,使用計画にずれがないようにする。
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Research Products
(7 results)