2018 Fiscal Year Research-status Report
拡散強調画像とトラクトグラフィーを用いた緑内障の脳視覚路変性の検討
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17K18131
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
小川 俊平 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70529601)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 視覚路変性 / MRI / 拡散強調画像 / 網膜疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は網膜障害による脳視覚路変化を拡散強調画像(dRI)とトラクトグラフィーを用いて定量的に評価することを目的としている。緑内障は患者数は多いが視野障害程度、視野障害プロファイルが多彩なため、両眼に視野障害を来す加齢黄斑変性を視細胞障害モデル、レーベル遺伝性視神経症(LHON)を網膜神経節細胞障害モデルとして対比を行った。また、眼内リンパ腫、網膜静脈分枝閉塞症など、他の網膜障害疾患に関しても検討を行なった。 H30年度は以下の研究成果を論文として報告した。1)眼内リンパ腫のAZOOR様の光干渉断層計(OCT)所見について(論文5)。リンパ腫による視細胞障害は多彩な臨床像を呈し、OCT像も多彩である。視細胞障害の定量化にはあらたな基準が必要かも知れない。2)緑内障の対比として、視細胞細胞が障害される加齢黄斑変性における視覚路変性を評価したところ、障害視野偏心度に依存した視放線変化を検出し、視細胞障害疾患でも視放線変化をきたすことを確認した(論文3)。3)dMRIに加えて、髄鞘体積と相関の高いT1緩和時間マップ(qT1値)を用いてヒト視覚路を評価した。以前に我々はqT1値がdMRIに比べてロバストな値であることを報告した。このqT1値の特性を用いると、dMRI単独にくらべてqT1のカットオフを加えたほうが正確な視放線を特定できた(論文4)。4)LHONにおける脳視覚路障害をdMRIに加えて、髄鞘体積と相関の高いT1緩和時間マップ(qT1値)を用いて評価した。dMRIでは既報と一致した異常値を検出したが、qT1値は正常範囲内に留まった。これはLHONによる視放線障害がミエリンの脱髄によらない可能性が示唆される(論文1)。5)緑内障における、既知の網膜神経節細胞数の算出方法の精度を静的視野検査との整合性を比較検討した(論文2)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実施計画においては対象を緑内障としていたが、対象を広く網膜疾患を対象に広げたことで様々な病態における脳中枢白に対する影響を評価することができた。 具体的には、1)眼内リンパ腫、2)レーベル遺伝性視神経症、3)網膜静脈分枝閉塞症を対象にした研究を行った。引き続き緑内障に関しても、症例数を増やし視野障害パターン別の視覚路障害パターンを明らかにして行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、東京慈恵会医科大学眼科および厚木市立病院での患者リクルート、玉川大学脳科学研究所でのMRIデータ取得を行っていく。網膜機能、構造測定としての静的視野計、光干渉断層計を合わせて収集している。緑内障患者データの取得には、年齢を一致させた正常視覚者のデータが不可欠となるが、患者群の年齢が高く、正常視覚者データの取得が課題となる。この点からも発症年齢が比較的若年となる遺伝性網膜疾患をターゲットとしていくことは、研究推進の効率の面からも有利である。 これまでに取得したデータ、1)網膜色素変性症について。2)網膜感度と網膜光干渉断層計で測定した網膜厚の整合性に関して、に関する論文作成。次年度が最終年度となる。これまでに得られた成果を積極的に発表して行きたい。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りの使用額である。初年度に購入予定であった解析用ワークステーションの差額が残額となっている。現状では、複数のラップトップPCで解析に対応している。
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