2018 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞シートを用いた脳梗塞モデルに対する神経再生研究
Project/Area Number |
17K18132
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
劉 美憬 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10770985)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞シート / 間葉系幹細胞 / ペリサイト / 血管新生 / 神経再生 / 脳梗塞 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、脳梗塞に対する新規治療法として幹細胞移植は期待されており、失った神経機能を回復させる可能性が示唆されている。これらの多くは移植細胞浮遊液の経静脈・経動脈・直接脳内注入として報告されているが、細胞浮遊液を用いた移植方法は移植細胞を罹患部に十分に生着させることの困難さや、肺や肝臓における移植細胞のトラップ現象などの問題点が挙げられる。中枢神経系における細胞治療において、移植細胞を罹患部に非侵襲的に十分移植することは重要な課題であり、適切な移植方法は依然として不明である。罹患部に十分な移植細胞を生着維持させるための新たな新規治療方法の開発は、中枢神経領域における再生治療の進歩につながる。 新規細胞移植治療として、我々は温度応答性培養皿を用いて他家脂肪由来間葉系幹細胞シートを作成した。一過性中大脳動脈閉塞ラットによる脳梗塞モデルラットを作成し、罹患虚血脳に対して細胞シート移植を行った。細胞シート移植群と対照群を作成し行動解析を行い、細胞シート移植による神経機能の改善の有無を評価した。また、移植後の脳組織における血管新生、神経再生、移植細胞の挙動を組織学的に評価した。 細胞シート移植群で対照群と比較して行動解析における神経機能の有意な改善が認められた。細胞シート移植において罹患側の脳表に有意な機能的血管新生が認められた。移植した脂肪由来間葉系幹細胞は移植脳表から罹患脳深部へ遊走し、ホスト脳内の新生血管壁にペリサイトとして生着した。 温度応答性培養皿を用いて作成した細胞シートは、scaffoldを用いることなく温度変化のみで細胞シート化が可能である。従来移植方法と異なり、多臓器で細胞がトラップされず、罹患部に直接非侵襲的に移植可能である。脳梗塞モデルに対する間葉系幹細胞シート移植は血管新生と神経再生を有意に誘導し、障害された神経機能を有意に回復させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年3月末の時点で、本研究において当初より予定していた実験内容の施行は計画通りに進められている。 現時点までに得られたデータをもとに国内外の学会で発表を行い、現時点での課題や問題点を確認した。また、得られたデータをもとに、国際学術誌へ投稿を行い、2018年9月にJournal of Neurosurgeryに受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた実験データをもとに結果を考察し、起こった結果に関するメカニズムの更なる究明を行う。今後は、新規データをもとに、学術雑誌への投稿を行う予定である。また、本研究成果で得られた事実を基礎として、基礎実験の拡大、新規疾病への応用拡大を検討していく。
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Causes of Carryover |
支払い請求額を前倒しする必要が無いよう、本年度使用できる範囲での使用計画を立てて研究を行った。その結果、適切な範囲での残額となった。次年度に繰り 越し、実験に必要な物品、学会発表費用などにあてることで更なる実験の発展を期待する。
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