2019 Fiscal Year Research-status Report
Critical Analysis of Dysfunction of Real-time Disaster Damage Simulation System: "SPEEDI" and Other Cases
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17K18139
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
寿楽 浩太 東京電機大学, 工学部, 准教授 (50513024)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | SPEEDI / 科学技術社会学 / 構造祭 / 政策の失敗軌道 / リアルタイム被害予測システム / シミュレーション / 防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの調査により、リアルタイム被害予測システムに対する等身大の理解をもたらす専門知がしばしば政策プロセスや社会的論議の中で等閑視されること、それが制度設計の不備や不在を招来し、危機に際してシステムが期待に反して十分な効用を発揮しないこと、それどころか、結果論に基づくさらなる社会的論争を喚起し、科学技術やリスク管理に対する社会的信頼の毀損に棹さすことなどが実証的に明らかとなってきた。
今年度は、そのことを科学技術社会学や関連分野の先行研究を踏まえて理論的に位置づけつつ、一般的な含意を取り出してそれを学術的な成果として発信することに努めた。年度当初の予定通り、8月末から9月初旬にかけて米国で開催された4S (Society for Social Studies of Science)、9月に開催された科学社会学会、10月にイタリアで開催されたSHOT(Society for the History of Technology)、11月の科学技術社会論学会といった国内外の関連学会で成果を発表し、関連研究者から一定の評価を得た。
また、12月にフランス・パリ近郊のOECD/NEA(経済協力開発機構原子力機関)本部で開催された「原子力の社会科学の新機軸」に関する国際会議にを投稿したところ、受理され、口頭発表を実施した。これに対して、同会議の科学委員会より、米国原子力学会(ANS)の論文誌Nuclear Technologyの特集号所収論文として推薦され、最終版の論文の作成を進めた(その後、2020年5月に最終稿を投稿)。加えて、本研究の成果を含む解説論文を一般誌「ジャーナリズム」(朝日新聞出版)2020年2月号に寄稿し、広く一般市民、ジャーナリスト、行政実務家、工学系研究者等への情報発信にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画における最終年度にあたるため、研究成果の公表・出版を重視し、年度当初に計画した国内外主要学会での複数の口頭発表を概ね完遂したほか、原子力関係の国際機関主催の国際会議での発表、さらに会議論文が米国原子力学会の論文誌に推薦されるなど、順調だった面もある一方で、本研究の計画における大きな要素であった、本研究の成果を関係者の討議に供するWSが、RAの産休、新型コロナウイルス感染症問題もあり実施できなかった。 このため、研究機関の延長を申請し、同問題の推移を慎重に見きわめつつ、遠隔会議等の代替手段の採用も含め、対応を検討し、所期の成果を得るべく努力することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、2020年度は新型コロナウイルス感染症問題への適切な対応を行いつつ、研究成果を関係研究者に学際的に発信し、また、さらに広く社会全体にも発信することを重視している。このため、社会的に活用が進んでいるテレビ会議システムの使用を積極に的に検討するなどして、感染症問題に関する社会的・実際的要請に応えつつ、研究の推進を図りたいと考えている。
なお、研究代表者が2018年度より所属本務校での役職を命じられ、校務負担が増大している状況が継続している。引き続きエフォート率管理の最適化を図る必要があり、 短期RAの活用等により、研究業務の効率化を図ろうと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究においては、研究協力先研究者や研究補助アルバイトの協力を得て大きな効果を挙げてきたところ、2019年度においては研究協力先研究者の異動、研究補助アルバイトの出産に伴う休業があり、研究代表者も学内役職に関するエフォート率が増大する中、残念ながら研究計画の進捗が遅れた。また、2020年に入って新型コロナウイルス感染症問題が生じ、研究期間終盤に計画していた関係専門家を集めたワークショップの実施が困難となり、未了となった。このため、研究機関の延長を申請し、承認を得た。2020年度においてはテレワークや遠隔会議を活用し、新型コロナウイルス感染症問題への対応を行いつつ、これら遅れを解消する計画である。
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