2017 Fiscal Year Research-status Report
ラオスにおける農業協同組合をめぐる経済格差の是正と再生産過程の人類学的研究
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17K18150
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
箕曲 在弘 東洋大学, 社会学部, 准教授 (70648659)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラオス / コーヒー / 貧富の差 / 協同組合 / 家計戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2007 年にフランス開発庁の支援により設立された官製コーヒー協同組合がこの9 年間に規模を縮小させた実態に着目し、社会関係や生態環境の村落ごとの差異に配慮しながら、協同組合の規模縮小の原因を探ることにある。さらに、この調査を通して協同組合が実践する新たなコーヒーの生産と取引の仕組みが、農家の経済格差の是正と再生産にいかに作用しているかを明らかにする。 この目的を達成するために、平成29年度は、3月に約10日間の現地調査を行い、日本のフェアトレード団体が提携するコーヒー協同組合傘下の16村すべてを訪問した。当初の予定では8~9月に現地調査を行う予定であったが、別予算で行う調査を9月に実施したため、本調査は3月に異動させた。しかし、結果として得られた事実は多く、この若干の予定変更による調査結果への影響はなかったといえる。 また、当初は2つの村落に集中する予定であったが、まずは全体像をつかむ必要があると考え、16村すべてを回ることにした。その結果、①協同組合の活動の中で、幹部、各村組合長、一般組合員の3つの層の関係性の多様なあり方を知ることができたこと、②幹部が主導して行った融資プログラムの「失敗」の実態が明瞭になったことなど、多くの事実をつかむことができた。 一方で、調査対象とする協同組合幹部などへの聞き取り結果から、当該協同組合が、協同組合としてではなく、「会社」(コーヒーの商取引をするための組織)として登記されている実態がわかった。協同組合代表によれば、「まだラオスには完全なる協同組合はない」と表現しており、協同組合の法制度上の位置づけや、協同組合のあり方、考え方などが、予想以上に多様であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査の時期や調査対象村の変更などはあったものの、目的としている協同組合縮小の原因や、経済格差の是正や再生産への影響を考察するための基礎的なデータが集められたという点では、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も予定通り、協同組合縮小の原因、経済格差の是正や再生産への影響を考察するための基礎的なデータを、現地調査により得ていく。平成30年度は、11月に現地調査を行い、今度は仲買人と農民の取引の実態を明らかにする。11月は収穫時期にあたり、多くの仲買人が毎日のように買い付けを行っている。こうした取引の実態をおさえることで、協同組合にはない取引上の利点を明らかにする。これにより協同組合縮小の原因を明らかにできるだろう。同時に、仲買人の取引が、一般に言われるように搾取的であるかどうかをも考察する。これを通して、仲買人が経済格差の是正や再生産にどのようにかかわっているのかを明らかにする。この結果、協同組合を通した取引との共通性や相違性をより深く理解できるようになる。
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Research Products
(2 results)