2019 Fiscal Year Research-status Report
ラオスにおける農業協同組合をめぐる経済格差の是正と再生産過程の人類学的研究
Project/Area Number |
17K18150
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
箕曲 在弘 東洋大学, 社会学部, 准教授 (70648659)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラオス / コーヒー / 貧富の差 / 協同組合 / 家計戦略 / 負債 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2007 年にフランス開発庁の支援により設立された官製コーヒー協同組合がこの9年間に規模を縮小させた実態に着目し、社会関係や生態環境の村落ごとの差異に配慮しながら、協同組合の規模縮小の原因を探ることにある。さらに、この調査を通して協同組合が実践する新たなコーヒーの生産と取引の仕組みが、農家の経済格差の是正と再生産にいかに作用しているかを明らかにする。 この目的を達成させるために、令和元年度も、引き続き現地調査を行う予定であった。しかし、諸事情により渡航は不可能となった。その代わりに、本年度は論文執筆に時間を費やした。前年度の国際開発学会第29回全国大会で組んだ分科会のメンバーで『国際開発研究』に特集を組むことになり、当時口頭発表した「フェアトレードの「前払い」に対する贈与的解釈」をもとに論文を執筆した。また、同じく前年度の国際開発学会全国大会の企画セッション「持続可能な開発と文化の居場所」の内容を発展させ、書籍を刊行することとなり、そこに論文を寄稿した。これらの論文は令和2年度内に刊行される予定である。 一方、前年度4月28日に開催した「負債をめぐるポリティクス」を発展させ、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究科において共同研究会を立ち上げた。負債に関心のある15名の研究者が参加する共同研究会では、計量可能な負債と〈負い目〉の感情の関係に関する世界各地の民族誌的事例を取り上げていく予定である。本年度3月末にこの研究会において口頭発表する予定であったが、新型コロナウイルスの影響を受け研究会が延期となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた現地調査は実施できなかったものの、本年度内に2本の論文を執筆することができた。その点では、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、延期していた現地調査を敢行する。協同組合縮小の原因、経済格差の是正や再生産への影響を考察するための基礎的なデータを、現地調査により得ていく。11月に現地調査を行い、仲買人と農民の取引の実態を明らかにする。11月は収穫時期にあたり、多くの仲買人が毎日のように買い付けを行っている。こうした取引の実態をおさえることで、協同組合にはない取引上の利点を明らかにする。これにより協同組合縮小の原因を明らかにできるだろう。同時に、仲買人の取引が、一般に言われるように搾取的であるかどうかをも考察する。これを通して、仲買人が経済格差の是正や再生産にどのようにかかわっているのかを明らかにする。この結果、協同組合を通した取引との共通性や相違性をより深く理解できるようになる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、予定していた現地調査ができなかったためである。この分は、次年度の11月に現地調査を実施することによって使用する。
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