2017 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of Bit Error Rate Improvement Methods for CDMA-QAM Transmission and Applications in Railway Systems
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17K18153
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
望月 寛 日本大学, 理工学部, 准教授 (10434119)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | CDMA / QAM / 直交符号 / 鉄道信号システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CDMAの多重化信号の振幅値をQAMの各シンボルに割り当てたCDMA-QAM伝送方式のビット誤り率特性の向上を図るとともに、これをデジタルATC(自動列車制御)システムなどの鉄道信号システムへ応用する具体的手法について検討した。ここで、デジタルATCシステムではその伝送媒体としてレールを用いているが、これが持つ伝送可能な帯域が非常に狭いことから多情報化が困難であり、現在のシステムでは数kHzの搬送周波数を用いた300bps程度の伝送速度となっている。 このような条件下でビット誤り率特性を向上させる手法としては、従来の誤り訂正符号のような冗長ビットを用いない誤り訂正機能を実現することが必要と考えた。このことを踏まえて、CDMAで用いられている直交符号の相関特性を利用した誤り訂正機能の検討を行った。 まず、受信時におけるQAMのシンボル誤り不均一性や受信時に得られたCDMAの相関値特性などを用いて、伝送路上の雑音を推定する手法を明らかにした上で、それを用いた誤り訂正手法を示した。具体的には推定された雑音から送信シンボルとのノルムを算出し、そのノルム値があるしきい値以下になるまで、受信時におけるCDMAで多重化された64ビットのデータを1ビットずつ反転させていく手法である。これにより、64ビットのデータに対して最大3ビットまでの誤り訂正を実現できる可能性を示した。 一方、CDMA-QAM伝送におけるCDMA多重化信号の振幅値の不均一性などを利用し、実際に使用するQAMのシンボル数を64から16に削減でき、各々のシンボル間隔を広くすることでビット誤り率特性を向上できる可能性を示した。そして、実際に計算機シミュレーションによる性能評価を行った結果、従来の64QAMに比べて16QAMに削減した方が良好なコンスタレーション特性が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回提案したCDMAの相関特性を利用した誤り訂正機能では、伝送路上の雑音推定の評価を送信シンボルとのノルムによって評価している。これについて、送信時のシンボルと受信時のシンボルが近くに存在することを仮定した上で、幾つかのノルム算出手法を比較検討し、誤りビット数に対する特性を評価した結果、最も良い手法で4ビット誤りまで線形のノルム特性が得られることを確認した。そして、これを用いることで、受信側で多重化した64チャネルのデータを1ビットずつ反転させ、そのノルム値が一番小さくなるビットパターンを採用することを繰り返しながら誤り訂正を実現できる可能性があることを研究計画書に示した。その結果、実際に64ビットのデータに対して最大3ビットまでの誤り訂正を実現できる可能性を計算機シミュレーションによって明らかにした。 また、最適なQAMシンボル配置については、実際のCDMAの多重化信号の振幅値の不均一性と、CDMA多重化信号に含まれる1のデータを偶数個に固定することで、その振幅値も偶数に固定できることを生かしてシンボル数を1/4に削減できることを示し、これを計算機シミュレーションで評価した結果、削減したシンボルを持つQAMにおいて良好なコンスタレーション特性が得られることを明らかにした。 以上、これらはMATLAB/Simulinkによるモデル構築がおおむね完成しており、このモデルからFPGAなどのハードウェア実装に必要なHDLコードを直接生成することでハードウェア開発のめども立てている。 さらに、鉄道信号システムへ応用した際の評価を行うために、伝送媒体であるレールの伝送特性や雑音について調査した上で、実際にMATLAB/Simulinkによるモデル構築も行っているため、これまでの検討で使用したモデルと組み合わせることで評価できる環境を整備した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築したMATLAB/Simulinkによる誤り訂正機能やシンボル削減したQAMを用いた伝送方式のモデルを用いて、HDLコードを生成した上でFPGAへ実装した後、このハードウェアを用いた評価を行う予定である。 まず、実験室での基礎試験によって、実際に伝送誤りを与えた際に、提案する誤り訂正機能が実現できているかを確認するとともに、削減したQAMのコンスタレーション特性をオシロスコープなどを用いて評価する。また、鉄道信号システムへの応用を目的として、別に構築したレールの伝送および雑音モデルを用いて、実際のシステムを想定した伝送試験を行い、ビット誤り率特性などの性能を評価する予定である。さらに、実際のレールを用いたフィールド試験をあわせて実施し、これまでの試験結果との差異について考察することも検討している。なお、実際のハードウェアを用いた試験においては、伝送速度が低速であり、ビット誤り率測定に時間がかかること(1回の測定で数時間程度)が想定されるため、測定系をLabVIEWによって制御し、効率的な測定が行える環境を整備することも検討する。 一方、これらの試験と並行して、CDMAの相関特性を用いた誤り訂正機能と削減したQAMを用いた伝送システムを組み合わせた手法についてあわせて検討する。具体的には、最適な直交符号の符号長の選定やそれに伴うQAMのシンボル配置の最適化などを検討した上で、実際にMATLAB/Simulinkによる計算機シミュレーションモデルを構築する。そして、このモデルによって白色雑音による伝送特性を評価するとともに、鉄道信号システムへの応用した際の伝送特性についても評価し、これらの結果の差異について考察する。
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