2018 Fiscal Year Research-status Report
ペリレンキノン系色素で複雑な土壌有機物の安定化機構の解明に迫る
Project/Area Number |
17K18154
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 孝行 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10551228)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ペリレンキノン / 土壌有機物 / 存在形態 / 地球温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸上最大の炭素プールである土壌有機物の安定化機構の解明は、地球規模での気候の将来予測において重要である。本研究では構造が比較的明確で、世界の様々な土壌だけでなく、数万年前の時間幅を持つ火山灰累積土壌断面中の埋没層にも安定に存在するペリレンキノン系色素の化学構造解析と土壌中での分布ならびに安定化機構を明らかにすることを目的としている。 本年度実施した内容と結果の概略は以下のとおりである。 1)昨年度に引き続きペリレンキノン系色素を構成する主要な2成分の化学構造解析を推し進めた結果、1成分はDHPQ(4,9-dihydroxypelyrene-3,10-quinone)であることをNMRおよびDART-MS分析にて明らかにした。また、残る1成分はDHPQ核に酸性官能基が結合した新規化合物であることを強く示唆する結果を得た。 2)上記2成分の分別定量法を検討した結果、2成分の混合溶液をアセチル化あるいはTMS化することによって、それぞれHPLC、GC-MSで分別定量できる可能性を示唆する結果を得た。 3)喜界アカホヤ火山灰(K-Ah)を含む鹿児島県志布志市の累積火山灰土壌断面におけるペリレンキノン色素の分布量を測定した結果、2Ab層において最も高い含有量を示し、その含量は現表土より8倍程高かった。また、K-Ah直下の埋没腐植層でも、現表土より4倍程度高い含量を示した。同色素の垂直分布は、有機炭素含量の垂直分布の増大と概ね対応していたが、一部で異なる分布を示すことを見出した。現在、各層位の遊離三二酸化物の分析ならびに過去の植生と同色素含量との関連性の検討を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度計画を変更した実験室内におけるペリレンキノン色素の分解実験の条件の最適化が完了していないため、この項目についてはやや遅れていると判断される。しかしながら、各種土壌における同色素の分布と存在形態分析をはじめとするその他の項目では当初の予定よりも進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間内に室内実験によるペリレンキノン系色素の分解実験の実現は困難であると予想されるため、今後は培養条件の最適化を中心に進める。2種のペリレンキノン色素含量の分別定量についてのさらなる検討は、未同定の1成分の構造解明を行なったのちに実施する予定であるが、構造解析に必要な試料量が不足しているため、当該色素を高含量含む土壌試料(新潟県)の採取を計画している。また、同色素の分布と存在形態分析については、遊離三二酸化物との関連性を引き続き検討するとともに、植物ケイ酸体分析等を用いた過去の植生との関係ならびに2種の色素の存在割合との関連性について検討する。 これと並行して、ペリレンキノン色素の構造解析に関する内容等については、学術誌および学会等で発表する。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会に参加しなかったことが主たる理由である。この助成金は翌年度の旅費として使用する予定である。
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