2020 Fiscal Year Research-status Report
抑うつ予防のための、サポート期待介入ワークの開発に関する研究
Project/Area Number |
17K18157
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
亀山 晶子 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 講師 (70771252)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ソーシャル・サポート / 心理教育 / 抑うつ予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
励まし,手伝いなど周囲からの様々なサポートは,ストレスを緩衝し,抑うつの予防になることがわかっている。本研究の目的は,抑うつ予防のため,「自分は家族や友人からサポートを得られる」という予測(サポート期待)を高める介入ワークの原型を作成することである。研究の方法として,大学生のサポート期待向上に関連する認知的・行動的要因をもとにワークを作成,大学の授業内で介入ワークを実施しその効果を検討する。この目的の達成を目指して,本年度は前年度までの介入の効果と今後サポート期待を向上させる心理教育における課題点や限界について議論を進め,成果を論文として公表することであった。 当該年度の研究実績の概要としては,まず,前年度までの介入の効果を論文として発表するべく,その結果の整理を進めた。具体的には,予備的に実施した第1回目の介入データに翌年実施した追加の介入データを加え,改めて介入ワークの効果を検証した。その結果,統制群に比べて第1回介入群,第2回介入群において有意な社会的スキルの向上や自己効力感への肯定的な影響がみられた。また,今後の介入ワークを実施する教育環境を統制していくための課題や限界,さらに,サポートの受け手に対する印象を改善することでサポートを増やせる可能性が示唆された。このことから,今後サポート期待を増やすためには,受け手に対する介入ワークの実践と,サポート提供者となり得る人々へのサポートへの動機付けや心理教育が有効であることが示唆された。こうした成果と課題点を専門の研究者と共有し議論するため,日本心理学会第84回大会においてソーシャル・サポートに関するシンポジウムを企画・開催し,発表とディスカッションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,前年度までの介入における結果を整理し,今後の介入ワーク実施や作成にあたる課題や限界をふまえて論文として発表する予定であった。しかしながら,2020年の4月に所属先が変わるという研究環境の変化や,コロナ禍による活動の自粛や遅延,制限に伴い,成果のまとめや整理,それに伴う論文投稿が滞る事態となった。具体的には,緊急事態宣言による外出自粛によって,研究室に出入りができない期間が続き,かつ,前所属先の研究室に保管していた研究資料等を移動できないことで,結果の整理やまとめが滞った。こうした事情により,予定していた論文執筆に支障をきたし,予定通り投稿に至ることができなかった。したがって,このコロナ禍に伴う遅延を補うべく,研究期間を再延長するという判断に至った。 その一方,論文での成果公表の代わりに,本年度は学会でのシンポジウムを企画・開催し,サポート期待を向上させる試みに対する課題や限界点,発展可能性について専門の研究者の間で共有し議論をすることができた。例えば,サポートの受け手に対する否定的な印象を改善することでサポートが得られやすくする介入も有効である可能性を共有し,今後サポート期待向上のための介入の発展可能性を議論するとともに,提供者への介入についても考察を深めることができた。こうした活動によって,今後サポート期待向上への有効な介入を実施していくための基礎固めができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の遅れも含め,最終年度を再度1年延長することとなったが,研究計画の方向性として大きな変更点はない。本年度内で既に成果を関連分野の専門家や研究者との議論を進めたため,ワークの効果と今後の発展可能性,限界などの考察を深めることができた。これらの考察を踏まえて,次年度は論文として投稿する。 次年度は論文投稿にかかる費用として,情報収集のための学会参加費に加え,論文執筆に係る文献収集や図書の購入,そして投稿・掲載にかかる経費(抜き刷り代など)として使用する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍の感染予防対策として,学外活動や学会参加等のための出張が制限されたことや,各学会がオンライン開催になったことにより,旅費が発生しなかった。また,同様の理由によって,研究活動における人員の雇用にも制限が設けられ,成果の整理に関するアルバイトに伴う人件費や謝金が発生しなかった。 以上の理由により,今後も引き続き外出制限やアルバイトの雇用に制限がかかる可能性もあるため,次年度は代表者が成果を論文執筆するにあたって必要なその他の経費(学会参加費,図書,文献複写代など情報収集に係る経費,投稿に係る経費)として使用する予定である。
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