2017 Fiscal Year Research-status Report
アクチノロージンの有機触媒作用に基づく生体触媒成立の分子基盤の解明
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17K18159
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西山 辰也 日本大学, 生物資源科学部, 助手 (10759541)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | actinorhodin / oruganocatalysts / streptomyces / antibiotics / oxidase |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】生体触媒にはタンパク質である酵素とRNAであるリボザイムの2つがあるが、申請者らは第3の生体触媒として金属原子非含有低分子有機化合物である有機触媒を発見、報告した。これまで生物の生産する有機触媒は放線菌の生産するアクチノロージン(本化合物は抗菌活性を持つ二次代謝産物である)のみであるが、多様な二次代謝産物生産能をもつ放線菌からは新規な有機触媒が発見される可能性がある。さらに、申請者らはこのアクチノロージンと相互作用する細胞外タンパク質の存在を示唆する結果を得ている。そこで、有機触媒-タンパク質複合体の機能解明と、明らかになることの少ない二次代謝産物の生理的な意義の解明を目指した。 【結果】標的とする分泌タンパク質を精製、同定し、その遺伝子を特定した後で遺伝子のクローニングおよびアクチノロージン非生産放線菌を宿主としたタンパク質の大量発現に成功した。加えて機能解明を目指した遺伝子破壊株の作出にも成功した。本タンパク質はアクチノロージン生合成クラスター中のタンパク質であることが判明したため、破壊株のアクチノロージン生産能を調べたところ親株と比較して生産量が減少していることが判明した。一方で、それ以外に特徴的な形質の変化が見られず、破壊株から本タンパク質の機能を推測することは出来なかった。 本タンパク質とアクチノロージンとの相互作用を証明するために表面プラズモン共鳴分析装置で測定を行った。その結果、本タンパク質とアクチノロージンとの結合を証明することができた。さらに組換えタンパク質の結晶化の条件検討を行ったところ結晶化に成功し、X線解析の結果、2.4Åの解像度で立体構造を解析することにも成功した。 新たな触媒作用を持つ有機触媒の探索結果、現在までにおよそ800株の菌から探索したものの未だに発見には至っていないが、アクチノロージンと同様の活性を持つ菌体を複数発見できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では有機触媒の機能を持つ二次代謝産物と、それに結合する分泌タンパク質の機能解明を目的として、遺伝学的な解析に、目的とする分泌タンパク質の大量発現系の構築や遺伝子破壊を、生化学的な解析に、熱力学的手法やタンパク質の結晶化による構造決定をあげて実験を行った。実験計画は順調に進んでおり、その中で本年度では組換えタンパク質の結晶を得ることに成功し、解像度は少し低いものの立体構造が解けたことが計画を上回っている要因にあげられる。また、破壊株の作出にも成功しており、これらは遺伝学的手法の確立されているモデル生物を研究対象としたメリットでもある。目的タンパク質とアクチノロージンとの相互作用解析は当初の予定であったITCでは観測できなかった。しかし、うまく遂行できなかった時のために予定していたBiacoreでその結合を証明できた。 一方で新たな触媒作用を持つ有機触媒の探索では難航しており、こちらは引き続き継続予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画通り本タンパク質をコードする遺伝子の時期特異的な転写・発現がないか調べる予定である。また、結晶化による立体構造の決定では十分な解像度のデータが得られておらず、加えて組換えタンパク質を用いた結晶であることから、更なる解像度の向上を目指した結晶化の条件検討と、アクチノロージンとの共結晶を目指す。スクリーニングでは新たな触媒作用を持つ有機触媒のスクリーニングも継続し、すでに得られたアクチノロージンと同様の触媒作用を有する菌株からは、その有機触媒の精製を目指す。
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Research Products
(2 results)