2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18162
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
原田 真澄 日本女子大学, 文学部, 研究員 (40580444)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人形浄瑠璃 / 文楽 / 古典芸能 / 近世演劇 / 近世文学 / 太閤記物 / 歌舞伎 / 義太夫節 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究計画で予定した通り歌舞伎作品の太閤記物作品調査と歌舞伎「けいせい筥伝授」を中心とする分野横断的作品研究に、太閤記物作品「物ぐさ太郎」の翻刻を行った。 現在確認出来る翻刻済みの太閤記物作品は凡そ33作品を数える。それ以外のテキストが現存していない歌舞伎作品についても、番付類に書かれた登場人物名などから太閤記物か否かを判断し、さらには周辺資料(錦絵・評判記など)によってもその裏付けをおこない、太閤記物作品をピックアップした。今年度は太閤記物流行が始まる寛政期直前の天明期までの歌舞伎における太閤記物作品を調査し、天明期までの作品年表を作成した。 また、分野横断的作品研究として、歌舞伎の太閤記物「けいせい筥伝授」と人形浄瑠璃の太閤記物関連作「恋伝授文武陣立」との間の影響関係の調査、研究を行った。この研究については、論文「小西行長-近世の軍記から演劇まで-」(『アジア遊学』212特集:関ヶ原はいかに語られたか-いくさをめぐる記憶と言説-(勉誠出版、2017年8月)所収)にまとめた。 さらに、太閤記物浄瑠璃作品として、後続への影響が大きい注目作である「物ぐさ太郎」を翻刻した。本作は、後に歌舞伎に移され、近代まで上演記録がある重要作である。こちらは『義太夫節浄瑠璃未翻刻作品集成52 物ぐさ太郎』(玉川大学出版部、2018年3月)として出版された。 今年度は、作品調査と作品研究、作品紹介(翻刻)で予定以上の研究成果が得られており、来年度以降も遅滞なく研究が推進できるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた研究が問題なく進められており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降には、まず歌舞伎作品の太閤記物作品調査の遺漏を補いつつ、近世演劇(人形浄瑠璃・歌舞伎)の「太閤記物関連作品」調査を集中的に進める予定である。 人形浄瑠璃作品の「太閤記物関連作品」については、申請者によって既にある程度の基礎的な調査は済んでいる。しかしながら、未翻刻作品やテキストが残っていない「太閤記物関連作品」については、未だ調査が行き届いていない。そのため、興行関連資料から人形浄瑠璃の「太閤記物関連作品」を確認する。歌舞伎の「太閤記物関連作品」についても同様の手法でテキストや周辺資料からの確認を行っていく。これらの調査により、平成30年度中に「近世演劇の太閤記物および太閤記物関連作品年表」を作成することを目標とする。 また、平行して分野横断的作品研究にも随時着手する。現在予定している個別の作品研究は、近松半二作「近江源氏先陣館」・「太平頭かぶとの飾(鎌倉三代記)」の連作と歌舞伎「近江源氏仕方講釈」の影響関係の研究、および明治期に再流行した河竹黙阿弥の太閤記物と「太閤記関連作」についての作品研究である。 平成29年度は太閤記物人形浄瑠璃「物ぐさ太郎」の翻刻を行ったが、今後も注目すべき作品・資料があれば翻刻・紹介を行っていく。
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