2021 Fiscal Year Research-status Report
ブランドマネジメントの慣性に関する実証研究:ブランドのあるべき姿の再構築
Project/Area Number |
17K18167
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
大竹 光寿 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (40635356)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブランド・アイデンティティ / ブランド・イメージ / 正統性 / 組織慣性 / シェアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業組織の活動、とりわけマーケティング活動に関わる慣性が強化、緩和されるプロセスを明らかにすることである。本研究では主に、組織内外で共有されたブランドイメージがリブランディングや新たなブランドの構築を阻んでしまうという、強いブランドであるが故に生じる慣性に焦点を合わせている。 昨年度の引き続き2つの視点から検討を加えた。第1に、強いブランドの源泉ともなっているブランドの正統性、すなわち「ほんものらしさ」が消費者によって見出されるメカニズムについて明らかにすることである。消費者がブランドの正統性を見出す際の手がかりについて体系的に整理し、特に、現在急速に広がっているシェアリングと呼ばれる非所有型の消費形態では正統性が見出される手がかりが消費者の過去の消費経験に影響を受けていること、また、消費者が正統性を見出しているブランドについて所有から非所有型の消費形態に移行する際の条件、さらに非所有型の消費形態から所有型の消費形態に移行する条件を明らかにした。 第2に、そうした当該ブランドを提供する組織の外で認知されたブランドの正統性が当該組織にも共有されることで新しい取り組みが阻まれてしまう状態がいかにして打破されるのかを明らかにすることである。海外展開する企業、とりわけ複数の地域で展開する企業でかつ、シェアリングが進んでいる市場と所有型の消費形態がいまなお根強い市場、それぞれに対応を迫られている企業に焦点をあわせて、検討を重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にそって進捗状況を説明する。 第1のテーマ、すなわち消費者によるブランドの正統性に関する研究については、おおむね順調に進展している。異なる消費形態における消費者が見出すブランドの正統性の源泉の違い、また、自己の観察を通じて得られた手がかりを元に正統性を見出すプロセスについて精査し、海外の消費者行動研究のジャーナルに投稿する予定である。また、これまで継続的に注目してきた特定のブランドに対する消費者による正統性探求について学会発表を経て論文にて発表する。 第2のテーマである組織慣性に関する研究についてはやや遅れている。本研究の初年度に一部の知見(単一事例研究)を発表済みであるものの、事例対象に加えた海外でのブランド展開に伴う慣性の強化と緩和について、コロナ禍で海外でのフィールド調査が一昨年、昨年に引き続き行えない状況である。特に海外でのブランド展開によって慣性が緩和されるプロセスについては本研究において重要な論点のひとつであり、先に触れた初年度の論文でも仮説発見的に取り上げた視点である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要にそって今後の研究の推進方策を説明する。 第1の消費者によるブランドの正統性に関する研究については、デプスインタビューとエスノグラフィックインタビューを元にして得られた知見を、対象者を増やして確認することと、同一調査対象者に行っている継続的なインタビューで得られたデータから新たな知見を得る作業を行う。また、ブランドの正統性が社会的に構築されていくプロセスについて、理論的枠組みを構築する作業もあわせて行う。 第2の組織慣性の研究については、コロナ禍の状況次第ではあるが、海外でのブランド展開の事例を対象にしてデータを収集する。フィールドワークを主体している本研究では、オンラインでの調査では資料収集などの点で課題もある。海外企業の日本国内展開を事例とすることも想定し、研究をすすめていく。
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Causes of Carryover |
消費者に対する対面のインタビュー調査と、消費される現場でのフィールドワークがコロナ禍のため行えなかったこと、そして時間と資金を大きく費やす海外でのフィールドワークが実施できなかったため使用額が生じた。また、英語以外の言語を用いるアジア地域におけるデータ収集にともなう翻訳通訳費用、そうした調査を元にしてまとめあげる海外論文の校正代などの費用支出が一昨年、昨年度に引き続きなかったため大幅な使用額の差が生じた。 今後は、コロナ禍が収束しないことも想定し、その場合、オンラインでの定性調査を両研究(消費者および組織)において主要なデータ収集の方法として用いる予定である。海外フィールド調査費用として予定していたものをオンライン調査費用として用いることになる。コロナ禍が収束し、海外でのフィールドワークが実施できる状況になった場合には、予定通り、アジア地域でのフィールドワークに必要となる費用として用いたい。
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