2020 Fiscal Year Research-status Report
フランスと仏領インドシナの文化的交差―仏越作家の視点
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17K18170
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
平賀 美奈子 (河野美奈子) 立教大学, 外国語教育研究センター, 教育講師 (20795570)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランス文学 / インドシナ研究 / ベトナム文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスの植民地であった仏領インドシナの文化的状況を文学的、社会的な角度から分析することを目的としている。具体的な研究対象は、インドシナ生まれのフランス人作家マルグリット・デュラスの自伝的作品とフランス式教育を受けたジャーナリスト、グエン・ヴァン・ヴィンの出版物である。彼らの書いた作品や出版物を研究することにより、今まであまり焦点が当てられていなかった当時のフランス人入植者とインドシナの人々、主にベトナムの人々との間で営まれた文化的交差状況を言語化していきたいと考えている。 すでにデュラスの作品とグエン・ヴァン・ヴィンの出版物に関する研究を論文としてまとめているが、ヴィンの資料と当時のフランス人入植者に関する資料にはまだ研究の余地を残しており、2020年度を研究の延長期間とした。2020年度はベトナムのホーチミン・シティにある国立公文書館に研究調査に赴くことを予定していたがコロナ禍のためベトナムに行くことができなくなり、研究計画の変更を余儀なくされた。 本務校でもオンライン授業に移行するため、教育講師としての仕事も多岐にわたった。しかしそのなかでも2019年にフランスのエクス=アン=プロヴァンスにある国立海外文書館において行った研究調査をまとめ、立教大学フランス文学研究室紀要『フランス文学』50号に発表できたことは大きな成果となった。またその成果により、立教大学アジア地域研究所の所員に認められたことにより研究の幅が広がることとなった。 研究最終年度である次年度は2020年度にできなかったベトナムへの研究調査を行い、まとめていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況としては、初年度にデュラスとインドシナの関係を自伝的作品から分析し、その次の段階としてグエン・ヴァン・ヴィンの出版物の分析と考察を行った。以上の2つの研究成果については、学会での発表及び論文の作成として成果を出している。本年度は、ヴィンの出版物のさらなる分析とフランス人入植者の研究、そしてベトナムでの研究調査を予定していた。 しかし、コロナ禍のため、ベトナムでの研究調査が行えず、研究はやや遅れている。そのような状況ではあるが、当初の研究計画の1つであった、フランス人入植者であるマルグリット・デュラスの両親の公文書をまとめ、デュラスの自伝的作品との関連性を考察した報告書を発表できたことは大きな成果と言える。2020年度ではまず、2019年度に赴いたフランスの海外文書館で収集したデュラスの父親の資料を分析し、当時のインドシナにおけるフランス人居留区の状況を考察した。インドシナの閉鎖的な白人居留地とそこで描かれる登場人物はデュラス作品で非常に重要な文学的要素となっており、それを裏付ける資料を発見し、報告書にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる次年度はまず、ベトナムでの研究調査を予定している。ハノイのベトナム国立社会科学図書館に所蔵されているグエン・ヴァン・ヴィンのフランス語による日刊紙『アンナン・ヌーヴォー』(L'Annan Nouveau)の残りを収集したい。次にホーチミン・シティの国立公文書館にてインドシナ期のデュラスに関連した資料を収集することを予定している。デュラスはインドシナ時代にバカロレア(高等教育修了試験)をベトナム語で受けており、その資料を収集したい。デュラス作品とベトナム語に関する研究は今まであまりされてこなかった。しかし、デュラス作品とベトナム語は非常に重要な関係がある。この点に関して国立公文書館で資料を収集し、分析することにより、研究としてまとめたい。
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Causes of Carryover |
本年度はベトナムでの研究調査を予定していたが、コロナ禍のため海外での研究調査が行えず、次年度使用額が生じた。次年度では、前年度の残額と次年度経費を合わせ、ベトナムでの研究調査のための出張旅費としてまず使用する。次に資料収集のための印刷費、マルグリット・デュラス、及びインドシナ関連の書籍購入のための経費として使用したい。
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