2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K18175
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
波多江 悟史 早稲田大学, 法学学術院, 講師(任期付) (10792947)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 商業放送 / 外部的多元主義 / 内部的多元主義 / 基本供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
商業メディアの企業性と公共性について憲法学的に考察する本研究は、2018年度においては、1980年代におけるドイツ憲法学を素材にして、私人は商業放送を設立運営する権利を有するのか、そして放送独占は私人による商業放送の設立運営の権利を侵害するのかを検討する予定であった。 この点に関しては、内外の文献を調査することによって、当時のドイツにおいて私人による商業放送の設立運営の権利がどのように理解されていたのかを明らかにすることができた。さらに、その研究を遂行する上で、とくにフランスとイタリアの放送の自由をも参照することによって、ドイツの放送理解がどのような比較法的特質を有しているのかを解明することができた。 ドイツ、フランス、イタリアでは、放送の自由は、憲法裁判所の放送判決によって形成されてきた。しかし、フランスの商業放送は、公共放送と同じく、内部的多元主義によって規律されるのに対して、ドイツの商業放送は、公共放送とは異なり、外部的多元主義によって規律されている。さらに、イタリアでは、公共放送と商業放送は相互に関係付けられないのに対して、ドイツでは、公共放送と商業放送は一体として理解され、公共放送が最低限度の言論伝達(基本供給)を担う限りにおいて、商業放送を導入することが可能とされている。したがって、ドイツでは、私人による商業放送の設立運営の権利は、憲法上は保障されていないが、立法者が商業放送を導入することを決定した場合には、その決定を尊重する結果として保障されることになっている。 こうしたドイツの商業放送の自由の理解は、政治家が放送に介入することを批判するとともに、国家が放送規制を撤廃することにも警戒する必要がある日本の放送法の状況においても、重要な意義を有していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに上記において述べたように、2018年度は1980年代ドイツにおける商業放送の自由について研究を予定していたが、その研究は順調に遂行することができたので、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、日本における新聞や民間放送がどのような役割を果たすべきかについて検討する予定である。もっとも、ドイツにおける新聞の企業性の憲法保障については、2017年度で検討することを予定していたが、十分に解明することができなかったので、この点についても引き続き調査する予定である。これらの問題については、主にメディア研究者によって考察されてきたので、憲法や法学以外の文献を参照しながら、商業メデイアの役割について憲法的規範として構成することに尽力したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は僅少であるため、主に書籍の購入に使用する予定である。
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