2017 Fiscal Year Research-status Report
溶液法で作成したフレキシブルIGZO半導体の物性の解明と特性改善
Project/Area Number |
17K18177
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森本 貴明 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70754795)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | IGZO / 酸素空孔 / フォトルミネッセンス / 溶液法 / 透明半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、溶液法を用いたIGZO薄膜トランジスタ(IGZO-TFT)の特性向上を目的としている。そこで、TFTの重要な構成要素であるゲート絶縁膜材料をSiO2からYSZ、Al2O3、YAlO3等に置き換えると共に、IGZO作製時における焼成温度、Ga比率を変えた実験も行った。その結果、IGZO-TFTの特性は、ゲート絶縁膜だけでなく、焼成温度、Ga比率にも大きく影響されることが分かった。その原因として、酸素空孔が電子散乱中心として働くため、その低減がオン電流の増加をもたらすことが考えられる。 一方、酸素空孔を検出する測定手法が限られるため、その検出や定量が難しい。例えば、酸素空孔によるO1s 電子のX線光電子分光(XPS)ピークのシフトから酸素空孔を検出する方法が用いられるが、ピークのシフト量が半値幅と比べて小さいため、ピーク分離が難しい課題があった。そこで、別の方法として期待されるのがフォトルミネセンス(PL)測定である。しかし、IGZOと組成の近いZnOで見られる2.36eVのPLが酸素空孔に起因すると報告されているものの、IGZOでは酸素空孔のPLの報告は少ない。そこで我々は、PL測定によるIGZO中の酸素空孔の検出を試みた。 Ga比率を0-80%、焼成温度を300-600℃の間で変えたIGZO膜について、XPS測定、PL測定を行った。XPS測定によると、焼成温度の低下、あるいはGa比率の上昇により、格子酸素が減少し、酸素空孔や表面に弱く結合する酸素が増加する。それと同時に、2.0eV付近に見られるブロードなPLの強度が増加する。すなわち、酸素空孔量とPL強度は良く相関することが分かった。これより、IGZOの2.0eV-PLも酸素空孔が原因であることを確認する結果が得られた。なお、焼成温度が低くGa比率が高いほど酸素空孔が多いのは、低温ではGaが酸化せずIGZOの形成が不十分となるためと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、IGZO-TFTの特性が酸素空孔量に大きく支配されることが分かったため、フォトルミネセンス(PL)測定を用いた検出、定量手法を研究した。その結果、PLピーク強度が、IGZO膜中の酸素空孔量を極めてよく反映することを明らかにすることができた。さらに、酸素空孔の低減には、焼成温度を高く、かつ、Gaの比率を少なくすれば良いことを見出した。以上の知見により、今後は、「なぜ特性が変わったのか」という物性的知見基づいて、系統的にIGZO-TFTの特性改善を進めることが可能となる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、IGZO-TFTの特性向上の要となる絶縁膜の選定を行う。フレキシブル半導体に一般的に用いられる高分子ゲート絶縁膜は一般に誘電率が低く欠陥が多いため、TFTの移動度が低下する問題がある。そこで、申請者が今まで研究してきた高誘電率無機材料の適用を検討する。高誘電率材料の一つであるYSZは、高誘電率、かつ薄い膜を作製可能であるため、特性を劇的に改善できる可能性がある。一方、課題として、Off電流も増加するため、その低減が必要である。そこで、その原因を、PL寿命測定を始めとする先端的機器による分析結果とI-V、C-V測定結果との付き合わせにより特定し、特性改善に繋げる。
|
Causes of Carryover |
申請者の所属機関の変更に伴い、29年度に予定していた熱処理装置の購入を、所属機関変更後の30年度に延期しました。
|
Research Products
(5 results)