2020 Fiscal Year Research-status Report
The Formation of Islamic Legal Schools through Interactions between Southeast Asia and other Regions
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17K18179
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
塩崎 悠輝 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (00609521)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イスラーム / スーフィズム / イスラーム法学 / ウラマー / 東南アジア / 中東 / 南アジア / ロヒンギャ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、コロナ禍のため、研究計画の再検討が必要になった。予定していた東南アジアや中東といった海外での現地調査を全く行えなかった。また、欧米での資料収集や学会での研究発表を行うこともできなかった。国内の学会にインドネシアから共同研究者を招聘することもできなかった。 結果として、令和2年度はこれまで収集した資料の分析と著作の執筆が中心となった。英語の共著3点を執筆し、令和3年度に刊行される予定である。日本語での研究発表は書評論文が1点、口頭での研究発表は、国際会議が1回である。 英語での共著の内、1点は、オランダのBrill社から刊行される予定である。イスラーム世界各地のスーフィズムに基づいた詩についての論集の中の1章であり、東南アジアのマレー語による詩について論じている。スーフィズムの思想では、個人が存在のより高い段階に達する方法論を示すが、同時にその方法を理解するために世界の創造の過程や構造についても論じられる。その思想は、詩などの文学作品で多彩な比喩を交えながら人口に膾炙し、世界観を普及させていった。本研究の目的は、東南アジアと中東、南アジアの間の歴史的な交流とイスラームの知的影響を検証することである。東南アジアのスーフィズム文学がイランやインドから影響を受けて独自の発展を遂げていった過程を検証して英語の著書で発表することは、本研究の成果の1つとなる。 他の英語での著作の内、1点は、日本におけるムスリム家族の女性、特に母親の役割についての研究である。ムスリム社会における父系制と母系制の多様な実態についての研究であり、他のアジア諸国の研究者らとの共著である、 もう1点の英語での著作は、コロナ禍における東アジア諸国の宗教の動きについての論集であり、シンガポール国立大学をはじめとする諸外国の研究者らとの共著である。米国のハワイ大学出版から刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は国外での調査や研究発表はできなかった。しかしながら、英語の著作の執筆に専念できたことで、研究成果を発表していく準備ができた。 海外での学会に現地参加することはできなくなったものの、オンライン化がすすんだことで、同じ研究分野の最新の研究成果や、新たに導入されている研究方法について知ることができる機会が増えた。このような機会を通して、今後の研究に資する知識を、従来以上に得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
海外での調査や研究発表は、今後も困難な状況が続くと考えられる。コロナ禍の状況で、世界的に人文学のデジタル化が急速に進んでいる。本研究は、東南アジアから中東にかけてのイスラーム学者の知的なネットワークを研究対象としている。ネットワーク分析は、社会科学や歴史学においても研究方法が目ざましい発展をとげており、ネットワーク可視化分析のための様々なソフトウェアが開発されている。 本研究では、人文学、社会科学の他分野で発展している研究方法も取り入れながら、歴史的なイスラーム学者のネットワーク可視化分析を、研究に取り入れていく。そのために、これまで収集した東南アジアのイスラーム学者についての文献を、複数のネットワーク分析用ソフトウェアで分析していく。そうすることで、本研究の分野で、新たな視点と独自の解釈を示す研究成果を発表できると考えられる。
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Causes of Carryover |
予定していた中東や東南アジアでの現地調査、ヨーロッパでの研究発表、インドネシア人研究者を日本へ招聘しての研究会が開催できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、可能であれば海外での現地調査を実施し、それができない場合は、著作などでの研究成果発表のために使用する。
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