2018 Fiscal Year Research-status Report
非特異的腰痛患者における体幹前傾保持時間が身体に及ぼす影響について
Project/Area Number |
17K18203
|
Research Institution | Niigata University of Rehabilitation |
Principal Investigator |
北村 拓也 新潟リハビリテーション大学(大学院), 医療学部, 助教 (60769727)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 腰痛 / 非特異的腰痛 / 筋筋膜性腰痛 / 筋血流 / 筋持久力 / 筋硬度 / 筋内圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
腰痛の生涯発症率は80%(Hart LG、1995)とされており、我が国の調査(厚生労働省、2013)によると、自覚症状の訴えで特に多いのが腰痛であり、有訴率は男性が1 位、女性では2 位となっている。自覚症状として多い腰痛であるが、確定診断が困難な側面もあり、多くは原因不明のいわゆる非特異的腰痛とされている。近年では、心理社会的要因の影響も報告(菊池、2003)されているが、物理的な要因が主との報告(Billius E、2016)もある。 非特異的腰痛の主たる原因と考えられているのが筋筋膜組織である。筋筋膜性腰痛は、非特異的腰痛の80%以上を占めるとされており、近年では関心が非常に高くなってきている。これまでの報告によると、背筋の筋力低下(Hee、2013)や筋持久力の低下(Nicolaisen、1985)、筋内圧の上昇(紺野、1994)が報告されている。また、腰痛部の圧痛と筋硬度には関連(松谷、2008)があり、筋痛の病態には血流障害による疼痛発生機序の可能性が考えられている(Field HL、1994)。 筋筋膜性腰痛と考えられる患者の多くは、長時間の立位前傾時に腰部違和感を訴える。これらの訴えと先行研究の結果を統合すると、以下のような仮説が成立する。長時間の立位前傾位をとることによって、腰部筋群は持続的な収縮を強いられ、さらに筋は硬くなり、徐々に筋血流が阻害され、発痛物質の蓄積、疼痛発生へと進行していくものと考えられる。しかし、これらの仮説を検証した報告はなく、これが明らかになれば、臨床応用として十分に活用できるものと考えられる。 そこで、本研究では筋筋膜性腰痛を有する腰痛疾患者の身体的特徴を明らかにするために、立位前傾持続時間と自覚症状(腰痛)、筋血流、筋硬度および筋活動の関連性を明らかにすることを目的とした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに明らかになった研究方法に関する内容を示す。筋血流の測定および筋硬度の計測に関しては、これまでの実験的研究によって高い再現性と信頼性を持って実施することができることがわかっている。一方で,筋活動の測定に関しては、機器の特性を含め、同定する筋の活動を正確に捉えられているかが不明であり、この点に関しては今後も検討してく必要がある。 一方、実際の研究結果に関して得られた結果では予想とは異なる結果が得られた。前傾動作をした際の腰部筋群の血流変化についてである。臨床において患者からの訴えで多いのが家事動作をしている際であり、その発生までの時間は10分程度となっている。つまり、前傾位を保持してから10分前後で腰部筋群には何らかの環境変化が生じている可能性が考えられる。そこで、健常者を対象にして立位から軽度前傾位となり、それを1分間保持させ、その間の血流動態を計測した。その結果、前傾位から10秒程度で血流動態が変化し、腰部筋群の血流量が有意に減少することが明らかとなった。腰痛を有していない健常者でさえもわずかな前傾位を取ることで大きな血流動態の変化が生じていることが明らかとなり、実際の非特異的腰痛者との比較をする必要性がさらに高くなったと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験的研究で得られた結果を受けて、以下のようなことを今後明らかにしていく。まず第一に、筋活動を測定する筋の同定である。前傾位を取っていくにつれて、徐々に皮膚接触の面積が変化し、正確な測定ができない状況である。正確なデータをとるためにも、再現性の高い方法を導く必要がある。 第二に、健常者を対象として筋血流の変化と筋活動、筋硬度の変化を明らかにすることである。これまでは、上記のうち筋血流に関しては明らかにすることができたが、その他の項目に関しては明らかにできていない。これらの要素が実際にどのように関連しているのかを明らかにしていく必要がある。
|
Causes of Carryover |
当初の予定では,論文化する本数が1本多い予定であった.実際の研究を遂行する過程で生じた問題点等の関係で論文化が難しかった. 今年度はその点を反省し,計画的にデータ収集と論文化を進めていく.
|
Research Products
(12 results)