2017 Fiscal Year Research-status Report
スフィンゴミエリン合成酵素欠損による急性骨髄性白血病進行の抑制機構の解明
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17K18205
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
谷口 真 金沢医科大学, 総合医学研究所, 講師 (30529433)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | sphingomyelin synthase / acute myeloid leukemia / sphingomyelin / CTL / MDSC |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)は、種々の遺伝子異常により、骨髄系の造血細胞が腫瘍化する疾患である。AMLを始めとする腫瘍細胞は、宿主の腫瘍免疫細胞を抑制することで腫瘍免疫から逃れている。こうした腫瘍免疫抑制作用には、腫瘍細胞と宿主の免疫細胞や血管内皮細胞などの周辺細胞とのサイトカインなどの液性因子の応答や細胞間接着が関与している。他方、スフィンゴミエリン(SM)は細胞脂質二重膜の主要構成脂質であり、SM合成酵素欠損(SMS-KO)マウスでは、サイトカインによる炎症性免疫応答や細胞間接着が低下することが分かっているが、腫瘍免疫との関連は不明である。 本年度は、マウス骨髄細胞を採取後AMLの原因遺伝子であるMLL-AF9を導入し、骨髄移植することによりAMLモデルマウスを作製した。AMLモデルでは従来骨髄移植時にX線照射し、宿主の骨髄を抑制し、正常骨髄細胞を同時移植するが、本モデルではAML移植を繰り返すことにより、骨髄抑制せずにAMLを発症することに成功した。本モデルをSMS-KOマウスで検討したところ、SMS2-KOマウスにおいて野生型(WT)マウスに比べ有意に生存が延長した。また、AML細胞へluciferase遺伝子を導入し、生体イメージングを行ったところ、AML細胞が一度生着し、増殖したのちに排除されていることが観察された。そこで、細胞障害性T細胞(CTL, CD3+;CD8+)および腫瘍免疫抑制細胞である骨髄由来抑制細胞(MDSC, Ly6C+;Ly6G+;CD11b+)細胞の割合をフローサイトメトリーにより解析したところ、CTLはWTおよびSMS2-KOマウス共に増加し、MDSCはSMS2-KOでは優位に増加が抑えられたことから、SMS2欠損により宿主の腫瘍免疫応答が変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、AMLモデルを作成し、SMS2欠損マウスにおいてAML発症が抑制されることを示した。また、フローサイトメトリー解析により、腫瘍免疫細胞(CTL)の増加および腫瘍免疫抑制細胞(MDSC)の増加がAML発症野生型(WT)マウスで見られ、SMS2欠損マウスではCTLの増加は見られたが、MDSCの増加は抑えられていた。このことから、SMS2欠損により宿主の腫瘍免疫に影響があることが示唆され、2年目が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、AMLなどの造血器腫瘍に対する宿主のSMおよびSMS2の役割を解明すること目指す。今年度はマウスにおけるモデルの作製、SMS2-KOマウスでの検討により、AMLに対する腫瘍免疫にSMS2欠損が関与する可能性が示唆された。これらの結果をもとに、次年度はCTLおよびMDSCの作用にSMS2がどのように関与するのかをAMLを発症したマウスよりCTLやMDSCを採取し、細胞培養系においてAML細胞への影響を明らかにすることで、AMLに対するSMおよびSMS2の役割の解明を目指したい。
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Causes of Carryover |
今年度は学会発表および論文執筆などに係る費用としての支出がなかったため次年度使用額が生じた。次年度の学会発表および論文添削・投稿、または物品等の購入費に充当する予定である。
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