2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18216
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
池本 裕行 高野山大学, 文学部, 研究員(移行) (90734682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近世史 / 経済史 / 死亡研究 / 死亡構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究目的は、近世日本社会における死亡実態について、農業・農村に関する社会構造、いわゆる基礎構造の分析結果を踏まえたうえで明らかにすること、具体的には日向・紀伊・出羽を対象として、死亡構造(=死亡者の性別・年齢別・月別分布)の解明とその形成要因の追求を行ったうえで、それらを比較して地域差の実態とそれが形成される要因を明確にすることである。 本年度は主に、高野山や山形における史料調査と、地方における寺院経営の現状の分析を行った。具体的な内容を以下に記す。 まず高野山や山形における史料調査である。高野山では山上の塔頭寺院において、出羽の日牌・月牌帳の調査を行った。日牌・月牌帳は本研究の基礎史料の1つと位置付けている史料であるが、当該寺院には村方・町方だけでなく、大名家の家中のものも残されていることが明らかになったため、それらについても調査した。現在は村方や家中分の分析を進めているが、その中には17世紀の死亡者情報を得ることができるものも含まれており、非常に注目される。山形では図書館などで、基礎構造の分析に必要な村方文書の調査を行った。加えて、当該地域の自治体史においても、村方文書を収集している。 次に、地方における寺院経営の現状については、2017年に高野山真言宗和歌山宗務支所下の寺院を対象に行ったアンケート調査を分析した。そして、寺院の経営状態は寺院間の格差が大きく、その一部は危機的な状況にあること、直葬は増加傾向にあること、永代供養墓は需要が見込まれるが、建立費用の回収だけでも数年を要すると考えられることなどが明らかになった。これは現代の供養の実態を分析することで、近世の供養の特質について考える材料とすると同時に、人口減少という地域社会の変化と対応させながら地方寺院の経営の現状を考察したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、出羽の村方を対象に研究を進めることを予定していた。この予定について、史料調査は進展があったが、分析はまだ途中である。ただ、日牌・月牌帳の調査では、町方の一部や、死亡構造の地域差だけでなく、身分差をも分析することを可能とする大名家の家中のものを調査することができた。これらを踏まえ、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は出羽の町方を対象とした調査・研究を予定している。まずは高野山の塔頭寺院において、未調査の日牌・月牌帳の写真撮影をするとともに、自治体史や当該地域の資料館・図書館等で村方文書を調査したい。その上で、町方だけでなく、本年度の研究対象地域であった出羽の村方と、大名家の家中について、日牌・月牌帳から死亡構造、村方文書から基礎構造を明らかにして分析を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は2つあり、第一に当該年度の3月末に発行される論文の抜刷(次年度4月に完成)の購入費用に充てるため、第二に当該年度に予定していた史料調査の一部が研究代表者の一身上の都合で行えず、次年度に持ち越すことにしたためである。 これらの使用計画であるが、抜刷については次年度5月時点で既に購入を終えており、史料調査については準備が整い次第行う予定である。
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