2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Regional Differences in Mortality Structure in Early Modern Japanese Society
Project/Area Number |
17K18216
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
池本 裕行 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (90734682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近世史 / 経済史 / 死亡研究 / 死亡構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究目的は、近世日本社会における死亡実態について、農業・農村に関する社会構造、いわゆる基礎構造の分析結果を踏まえたうえで明らかにすること、具体的には日向・紀伊・出羽を対象として、死亡構造(=死亡者の性別・年齢別・月別分布)の解明とその形成要因の追求を行ったうえで、それらを比較して地域差の実態とそれが形成される要因を明確にすることである。 本年度は、既に収集した北陸地方の史料の整理・分析を行った。具体的な内容を以下に記す。 昨年までに収集した北陸地方の寺院文書のうち、富山県と福井県のものを分析した。前者では、越中国婦負郡・新川郡の山村を事例として、農業ではなく運輸業を主な生業とした地域における天保クライシスの実態を共同で明らかにした。そして、天保クライシスは近世中後期において最大の死亡クライシスであり、餓死者と疫病による死亡者の双方が発生したのではないかと考えられることなどを指摘した。後者では、越前国大野郡の農村を事例として、北陸農村における天保クライシスの実態を分析した。その結果、北陸山村や他地域の農村と比較をすると、天保クライシスの被害の程度が相対的に軽微であったこと、北陸地方の天保飢饉では天保8年(1837)に死亡者が急増したことなどを明らかにした。 本研究は、新型コロナ感染症の影響もあり、当初の予定とは異なる地域を対象として分析を行うこととなった。しかし、紀伊・越中・越前の農村・山村・海村を事例とした研究を行うことで、研究目的であった死亡構造の地域差の実態とそれが形成される要因の解明を、相当程度進めることができたと考えられる。
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