2020 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける子どもの教育的余暇と芸術文化実践の社会格差に関する研究
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17K18221
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
小林 純子 南山大学, 外国語学部, 准教授 (00611534)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 芸術文化教育 / 文化政策 / 文化の民主化 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
家庭における文化実践と教育的余暇との関係を明らかにするため、フランスの戦後の文化政策と、芸術文化機関や教育機関に期待された役割を分析した。その過程で、「文化の民主化」のさまざまな含意とバリエーションをまとめた。そのうえで、パリ市による芸術文化活動のプログラムをはじめ、令和1年6月までに行ったフランスにおける4つの教育機関での調査対象となった教育的な活動が、どのような点で「文化の民主化」に貢献する可能性をもっているのかを考察した。 また芸術文化活動のみならず、教育的な余暇としてとらえられる子ども向けのスポーツに着目することで、子どもが過ごす時間とその特徴をあらためて整理することができた。その結果、家庭における文化実践とは異なる学校でのフォーマルな教育的空間における芸術文化活動の意義と特徴と、学校での活動とも異なるノンフォーマルな教育的空間における余暇としての芸術文化活動の意義と特徴が浮かび上がっている。すなわち、学校の公式のカリキュラムの範囲内で提供される活動には、さまざまな点において平等な普及の広がりが期待されるため、学校的な規範が制約として機能することがある。その反面、学校の公式のカリキュラムの範囲外で提供される活動には、活動の普及の大きさをさほど期待できないが、独創的な活動が認められる可能性や、それらを受け入れる文化的な土壌を形成する可能性がある。この違いは、子どもの文化的な社会化のプロセスにも影響を及ぼすと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の研究では、子どもを取り巻く文化的な環境を既存研究から把握する予定であった。このため、先行研究の分析を行ったほか、子どもの社会学や文化実践の社会学など関連する分野の研究者とのオンラインでの成果のやりとりを通じて交流の進展につとめたが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて再び日程調整に困難が生じ、国際的な研究会についてはこれを実施することができず、また芸術文化教育にたずさわる職業人らに行ったインタビューの分析にも遅れが生じているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究に関連する分野の研究者とのオンラインでの交流を継続し、芸術文化教育にたずさわる職業人へのインタビューの分析を進める。教育的な余暇の時間としてのフランスの芸術文化教育に参加する子どもと、その教育に従事する職業人が形成する社会空間を、文化政策や教育政策の文脈に位置づけてまとめる。この社会空間の多様性に応じた文化的な社会化のプロセスを明らかにし、こうした社会空間が「文化の民主化」にとっていかなる意味をもつのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染状況が変化したことにともない、延期して予定していた現地調査を断念したため。令和3年度の計画として、国外への研究出張が可能になった段階で現地調査を実施する予定である。
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