2017 Fiscal Year Research-status Report
Imaging for transcriptional network that controls transition of cell maturation in the root
Project/Area Number |
17K18223
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
塚越 啓央 名城大学, 農学部, 准教授 (30594056)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 根端細胞機能転換 / イメージング / 転写ネットワーク / 細胞壁合成 / 根の伸長 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の正常な成長には厳密に制御された細胞機能の転換が必須である。本研究では根端での細胞機能転換に重要な役割を果たすUPB1の下流で働く転写因子MYB50の機能解析から、細胞の成熟に関わる細胞機能転換分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 平成29年度はMYB50誘導発現系を用いたMYB50の支配する転写ネットワークの解析を進めた。エストラジオールによるMYB50の誘導発現を1、3、6時間行い、それぞれからRNAを抽出し、RNAseq解析を行った。その結果エストラジオール3時間処理で105遺伝子、6時間処理で163遺伝子が有意な発現変動を示していた。これらの遺伝子をすでに獲得しているChIPseqデータと統合した。その結果、数十の遺伝子のゲノム領域にMYB50が結合していることがわかった。これらの遺伝子の中で細胞の成熟に関わる遺伝子、特に、細胞壁の形成に関わると考えられる遺伝子4つの発現を、35Sプロモーター下でMYB50を過剰発現させた35S::MYB50株中で調べたところ、顕著な発現変動を示した。また、以前報告しているUPB1のマイクロアレイデータとの比較解析からも、これらがUPB1下流で発現変動を示すこともわかった。以上の結果から、今回抽出した4つの細胞壁合成関連遺伝子が、UPB1からMYB50という転写ネットワークによって制御され、根端の細胞成熟に関わることが強く示唆された。 また、根の部位得意的な薬剤処理を施すためのイメージングの条件検討を行った。その結果、エストラジオールは倍地中を拡散し、根端から地上部方向へ吸収されて行くことがわかった。植物の根端からある程度の距離を置いてエストラジオール処理を施すことで、プロモーターの発現の強弱を調節することは可能であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、MYB50エストラジオール誘導発現株を用いたタイムコースRNAseq解析を実行できた。このデータセットを解析することにより、MYB50が転写制御を行う下流遺伝子の同定を行うことができた。また、ChIP解析とRNAseqを統合することにより、MYB50のダイレクトターゲットの絞り込みも進めることができた。転写因子の機能解析を進めるに当たり、重要なダイレクトターゲット候補遺伝子群を選抜できたことは、本研究が計画通り順調に進んでいることを示している。 また、もう一つの目標であったイメージング法の改良も順調に進んでいる。本実験系で利用している誘導発現株ではエストラジオールを用いている。このエストラジオールの拡散の度合いや、それが根の成長に与える影響を定量化できたことは、今後のイメージング法改良の基盤となると言える。 以上、2点の進捗から本課題研究は順調に進んでおり、平成30年度に行う研究の基盤は十分に得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は平成29年度抽出することができたMYB50の下流に存在する細胞壁形成に関わる遺伝子群の機能解析を進め、UPB1から始まるMYB50を介した根の細胞機能転換メカニズムを明らかにする。まずはMYB50下流遺伝子のプロモーター領域をクローニングし、それらを蛍光タンパク質と融合させるTranscriptional fusionラインとT-DNA挿入による遺伝子破壊株を獲得する。Transcriptional fusionに関しては平成29年度に確立した、イメージング法を利用し、MYB50を誘導発現させたのちのこれら下流遺伝子の発現様式を捉える。また、遺伝子破壊株を用いて、根の表現型の詳細な観察も進める。これらの実験結果を合わせ、MYB50下流の根の細胞機能転換に関わる転写ネットワークを明らかにする。 MYB50の上流制御機構も重要であるので、平成29年度に作成したpMYB50::2xCFPをUPB1の誘導発現株に導入する。この形質転換体を用いてUPB1からMYB50への時空間転写制御を可視化する。この可視化においても平成29年度に確立したイメージング手法を用いる。 MYB50の上流と下流の制御機構を明らかにし、それらのデータを論文としてまとめ、根端における細胞成熟への機能転換をつかさどる時空間転写制御メカニズムを明らかにする。 MYB50の機能解析に加え、イメージング法の改良も引き続き行う。平成29年度に誘導系で用いているエストラジオールが一定の速度で拡散し、シロイヌナズナの根は地上部方向へ輸送することがわかった。そこで、平成30年度は局所的な刺激をマイクロキャピラリーにより行う。根端のメリステム領域のみの誘導は難しいことから、伸長領域で局所的な誘導をかけることにより、細胞の伸長や分化に関わるイメージングの確立を目指す。
|
Causes of Carryover |
物品購入の際の消費税分の差額が繰越となった。少額なので今年度中に使用が可能と判断した。
|
Research Products
(1 results)