2019 Fiscal Year Research-status Report
自動車燃費規制における政策波及と収斂過程の動態とその影響に関する研究
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17K18228
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
井口 正彦 京都産業大学, 国際関係学部, 准教授 (10643231)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 政策波及 / グローバル・ガバナンス / 自動車燃費 / 中国 / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
2019度の研究実績は主に2つである。 (1)昨年度明らかにした政策波及に関する2つのメカニズム及び既存研究調査から導き出された仮説に基づき、どのように各国の政策ネットワーク間で政策波及が起こるのか、その動態と影響について明らかにしたことである。その際、半構造化インタビューの手法を用いて有識者を対象に調査を実施したことで、仮説通り中国及びインドにおける自動車燃費規制をめぐっては強制的なメカニズムと、自主的なメカニズムの両方が組み合わさった形での政策波及が起こっていたことが明らかとなった。また、両国の自動車燃費規制をめぐる政策波及にとりわけ強い影響を及ぼしたのは欧州連合(EU)であることも明らかとなった。このことにより、EUの規範及び物質的パワーの両方の観点からの考察も視野に入れて研究を進める必要性が出てきた。 (2)本科研費の大きな研究成果の一つとして、研究代表者が編著者となり、‘Sustainability and Automobile Industry in Asia: Policy and Governance’(Routledge, 2020)を出版した。本著において、上記(1)で記載した知見について収録した。さらに、自動車燃費規制を含めたより統合的かつ持続可能な道路交通部門をアジアで実現するための政策とガバナンスについて、インド、インドネシアおよびドイツの研究者と共に、共同研究を実施し、その知見をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費の最大の目標であった、政策波及と収斂過程のメカニズムの整理、及びインドと中国における自動車燃費規制をめぐる政策波及と収斂過程の解明について論文をまとめ、それを編著としてRoutledgeから出版することができた。 このことにより、国際レジームやその国際交渉を経て作られる国際法的枠組みによって新たなルールを構築することで問題解決を図るとういうトップダウン型の環境ガバナンスだけではなく、国家が政策波及のメカニズムを通じて環境規制を強化した結果、環境問題の解決へと導くボトムアップ型の環境ガバナンスの根拠の一つを提示できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、中国及びインドへの現地調査を予定していたが、今年度の研究を通じて十分な情報収集及び考察ができたこと、また「研究実績の概要」にも記述したように、両国の自動車燃費規制をめぐる政策波及にとりわけ強い影響を及ぼしたEUの規範及び物質的パワーに関する追加調査の必要性があることから、次年度は文献調査を主軸として、本研究にさらなる考察を加え、研究成果の精度を高めていくこととする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、海外渡航を伴う現地調査や国際学会での成果発表が難しくなったため、当初の研究計画を変更せざるを得ない状況となった。 他方で、今年度の研究を通じて十分な情報収集及び考察ができたこと、また「研究実績の概要」にも記述したように、両国の自動車燃費規制をめぐる政策波及にとりわけ強い影響を及ぼしたEUの規範及び物質的パワーに関する追加調査の必要性が出てきた。 これらの理由により、今年度は文献調査を主軸として、本研究にさらなる考察を加え、研究成果の精度を高めていくこととする。
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