2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18229
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
赤岩 香苗 京都産業大学, 情報理工学部, 助教 (30771878)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 離散可積分系 / 逆固有値問題 / 全非負行列 / 直交多項式 |
Outline of Annual Research Achievements |
指定した固有値をもつ全非負(totally nonnegative, TN)行列を構成する逆固有値問題は、TN行列のもつ「すべての小行列式が非負である」という性質を満たす 必要があるため、解くことが困難とされてきた。研究代表者はこれまで、可積分系のもつ解構造や正値性といった「よい性質」を利用して、非対称帯TN行列の逆固有値問題の解法を定式化してきた。本研究では、新たな離散可積分系を導出し、これまで扱えなかったクラスの行列に対する逆固有値問題の解法を開発することを目的としている。 平成30年度は、直交多項式に着目して逆固有値問題の解法を開発した。具体的には、ローラン双直交多項式と直交ローラン多項式を用いて、特殊な形と性質をもつ5重対角行列の逆固有値問題の解法を提案した。ローラン双直交多項式は、2重対角行列を行列束にもつ一般化固有値問題との対応が知られている。ローラン双直交多項式を直交ローラン多項式に変換することで、ローラン双直交多項式を非対称5重対角行列および対称5重対角行列(ローラン-ヤコビ行列)の標準固有値問題と関連付けた。ローラン双直交多項式から得られる漸化式を利用することで、これまで同様、有限回反復で指定した固有値をもつ行列を求めることができる。今回新たに扱えるようになった5重対角行列は、研究課題の対象となる階段状の行列の特別な場合である。時間発展において全非負性を保存するような性質を持つ連続力学系との対応についても、引き続き検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、研究対象としている階段状の行列の特別な場合に対して、直交多項式を用いて逆固有値問題の解法を提案することができた。本手法は一般の場合に対しても利用することができ、解法の定式化の糸口が見つかったと言える。よって、研究課題達成に向けておおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の結果をもとに、直交多項式に関する最近の研究結果を考慮しながら、より広いクラスの逆固有値問題の解法に取り組む。また、時間発展においてTN性を保存するような性質をもつ連続力学系に対して、これまでによく知られている可積分系の離散化手法を利用することで、離散可積分系の導出を試みる。両者の結果を比較し、対応関係を調べる。
|
Causes of Carryover |
購入予定であったラップトップPCの発売時期を考慮し購入を延期したため、次年度使用額が生じた。平成31年度にラップトップPCを購入する予定である。その他、国際会議、国内会議、研究集会の旅費および参加費、研究会の会議室利用料、物品および書籍の購入などに使用する。
|
Research Products
(5 results)