2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18229
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
赤岩 香苗 京都産業大学, 情報理工学部, 准教授 (30771878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 逆固有値問題 / 離散可積分系 / 直交多項式 / 全非負行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
指定した固有値をもつ行列を作成する問題を逆固有値問題という。逆固有値問題は、作成する行列の性質や形によって難易度が異なる。とりわけ、すべての小行列式が非負である全非負(totally nonnegative, TN)行列の逆固有値問題の解法はほとんど知られていない。 具体的に解を書き下せる非線形方程式を可積分系という。時間変数を離散化した離散可積分系と呼ぶ。代表的な離散可積分系の1つである離散戸田方程式は、3重対角行列の固有値計算法として有名な商差(quotient-difference, qd)法の漸化式と一致する。この発見から、離散可積分系を起源とする固有値計算法がいくつか提案されてきた。 報告者は、これまでに離散可積分系と固有値計算法の関係に着目し、離散可積分系に基づく逆固有値問題の解法の定式化に成功している。最近では、離散2次元戸田方程式の簡約化から任意の帯幅をもつ帯TN行列の逆固有値問題の解法を、離散相対論戸田方程式からローラン-ヤコビ行列と呼ばれるジグザグ構造をもつTN行列の逆固有値問題の解法をそれぞれ導出している。 このように、これまで既存の離散可積分系および直交多項式から新たな逆固有値問題の解法を定式化を行ってきた。 2022年度は、既知の離散可積分系および直交多項式以外にも目を向け、ローラン-ヤコビ行列以外のジグザグ構造をもつ行列を構成する手法の開発に成功した。ジグザグ構造以外にも特殊な構造をもつ行列の逆固有値問題についても検討した。関連する既存の離散可積分系に関する文献について調査を進めている。 2022年度は、簡約条件付き離散2次元戸田方程式に基づく任意の帯幅をもつ帯TN行列の逆固有値問題の解法についての論文が国際論文誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
渡航制限の関係で対面開催の国際会議に参加できなかったり、一部の対面会議がオンラインに変更になったりして、情報収集や議論の機会を十分に確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
時間発展においてTN性を保存するような性質をもつ連続力学系に対して、既知の可積分系の離散化手法を適用して、新たな離散力学系の導出を試みる。関連する離散可積分系に関する文献が見つかったのでそちらについても引き続き調査を進める。直交多項式に関する研究結果等も考慮しながら、導出できた離散力学系との対応関係を含め調査する。これまでの結果を踏まえ、TN行列を作成するための条件を検討する。
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Causes of Carryover |
渡航制限の関係で参加予定の国際会議に出席できず、国内の学会・研究会も一部オンライン開催となったため、支出が少なかった。 2023年度は参加予定の会議が対面で開催予定となっているため、主に旅費に充てる。
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