2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病治療を目指す亜鉛錯体を含むバイオメタル医薬品の分子メカニズム解明
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17K18231
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
内藤 行喜 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80610120)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 亜鉛錯体 / インスリンシグナル / 分子メカニズム / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛ヒノキチオール錯体([Zn(hkt)2])をはじめとするO4型亜鉛錯体によるインスリンシグナル経路への影響を検討することを目的に、研究を行った。O4型亜鉛錯体として、主に[Zn(hkt)2]と亜鉛マルトール錯体([Zn(mal)2])を研究に用いた。 平成29年度は、1)[Zn(hkt)2]による3T3-L1脂肪細胞におけるインスリンシグナル経路中のPI3K活性化への影響、2)HepG2細胞におけるAktおよびFoxO1へのリン酸化促進作用についての検討、ならびに3)健常モデル動物におけるインスリン標的組織でのAktリン酸化促進作用の検討を行った。 この結果、3T3-L1脂肪細胞を用いた検討からは、亜鉛錯体はインスリン受容体を介さず、直接的にPI3Kの活性化をもたらすと考えられる結果が得られた。HepG2細胞への影響については、[Zn(hkt)2]はAktならびにFoxO1のリン酸化促進作用がみられた。このことから[Zn(hkt)2]には、FoxO1を介した、肝糖新生因子であるG6PaseやPEPCKの発現抑制を介した肝糖新生抑制効果があると考えられる。 また、予定している糖尿病モデル動物への亜鉛錯体投与実験の前段階として、健常モデル動物ICRマウス(雄性6週齢)に対して[Zn(mal)2]を腹腔内投与した時の、インスリン標的組織(肝臓、脂肪、骨格筋)へのシグナル伝達に関わる影響を検討した。結果、投与後40分において、脂肪組織におけるAktリン酸化上昇が認められ、[Zn(mal)2]は脂肪組織に特異的に作用を示していることが考えられた。3T3-L1細胞を用いた検討とあわせ、Zn錯体は生体においても同じくシグナル伝達へ影響を及ぼしていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね、当初の計画通り実験を遂行している。 3T3-L1脂肪細胞におけるPI3Kへの[Zn(hkt)2]の影響検討では、インスリンシグナル経路中PI3Kの下流に存在するPDK1への影響も、同時に評価している。 また、平成30年度に糖尿病モデル動物を用いた実験を計画しており、この時にインスリン標的組織である肝臓におけるAktリン酸化促進作用ならびに、糖新生抑制効果によるインスリン様活性を評価予定である。そのため、前段階として、in vitro系における肝臓への[Zn(hkt)2]の作用を検討するため、HepG2細胞を購入しインスリン様活性を評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
3T3-L1脂肪細胞でのインスリンシグナル経路への影響については、現在のデータをより裏付けるための実験として、免疫沈降法を用いてZn錯体によるPI3Kを構成する各サブユニットへの影響を、より詳細に評価する予定である。 HepG2細胞を用いた検討は、糖尿病状態を模するため、培養条件を高グルコース濃度に変更する。この時の[Zn(hkt)2]によるAkt、FoxO1のリン酸化促進作用の変化を検討すること、肝糖新生関連因子であるG6Pase、PEPCK発現量の変化を検討し、研究を進めていく予定である。 実験動物を用いた検討では、現在、亜鉛錯体によるインスリンシグナル経路への経時的な影響を検討している。 これらin vitro、in vivo実験での結果を踏まえて、Zn錯体以外の金属錯体の使用、糖尿病モデル動物を用いた検討へと順次進めていく予定である。
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