2019 Fiscal Year Research-status Report
緊急通報の心理メカニズムの解明とコミュニケーションの改善方法の提案
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17K18232
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Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
塩谷 尚正 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00756231)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 119番通報 / 通信指令 / コミュニケーション / 迅速性 / 正確性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には、119番通報のコミュニケーションの心理学実験の継続を実施し、完了した。実験の目的は、119番の通報要領の事前知識が通報行動におよぼす効果を検証することであった。実験によって得られたデータから、通話時間や発話内容を分析した。主たる分析結果は以下のとおりである。事前に通報要領の知識を与えられた実験群の方が、統制群よりも通話時間が短く、その差は統計的に有意であった。通報中における通報者(実験参加者)と通信指令員との話者交代が起きた回数は、実験群よりも統制群の方が有意に多かった。通話中の発話を文字に書き起こしてその数を比較したところ、実験群よりも統制群の方が、発話文字数が有意に多かった。通報によって伝達された情報を、個別の情報の重要度に応じて得点化して合計したものを情報伝達量として比較したところ、実験群と統制群に有意な差は認められなかった。以上の結果から、市民は通報要領に関する事前知識によって通報時間を短縮することが可能となり、通信指令員の聴取に効率よく応答できることが示された。これらの分析結果は、日本社会心理学会第60回および第3回通信指令員ポジウムで発表した。しかしながらその成果を学術論文として投稿、発表するには至らず、そのために次年度に研究を継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定されていた実験を完了し、分析結果を学会発表できたことから一定程度の成果を達成できた。ただし、学術論文の投稿、発表にまでは至らず、予定よりも遅れた部分が生じている。大きな理由として研究期間中の所属機関の変更があり、研究環境の整備のための想定外の時間を要したことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果を学術論文にまとめて投稿、発表することが第一の方策である。その過程で研究協力者との議論を進め、補足的な調査や実験による研究の推進を検討していく。
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Causes of Carryover |
前年度において研究成果を学術論文として投稿、発表するに至らかなかったために、そのための費用が次年度使用額として生じた。また学術論文として投稿するまでの詳細な検討の過程で、補足的なデータ収集が生じる可能性もあることから、その場合には必要に応じて研究費を使用する。
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