2017 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本におけるアブノーマルなセクシュアリティと近代化/反近代化論
Project/Area Number |
17K18242
|
Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
河原 梓水 国際日本文化研究センター, 研究部, 日本学術振興会特別研究員(PD) (70726017)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | サディズム / マゾヒズム / 奇譚クラブ / 高橋鐵 / あまとりあ / 告白 / 沼正三 / 村上信彦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまで研究対象とされてこなかったアブノーマル性風俗雑誌『奇譚クラブ』の1950年代のテクスト群を主たる分析対象とし、第一に、サドマゾヒズムを媒介とすることで行われた近代的人間の特異な模索報を明らかにし、第二に、1954年に起こったビキニ事件を画期として誌上に現れる、核と人種論、マゾヒズムが結びついた反近代化論の展開を明らかにすることを目的とする。本年度は、研究実施計画に基づき、第一の課題に関する資料の網羅的収集・検討を行なった。年度前半は国立国会図書館、風俗資料館、古書店等、国内を中心に、『奇譚クラブ』と同時代の性風俗雑誌や雑誌記事を収集、ほぼこれを完了した(『あまとりあ』、『生心リポート』、『夫婦生活』、「キンゼイ報告」に言及する雑誌記事等)。これによって、当該期の性風俗雑誌それぞれの位置関係、及び性科学・精神医学との関連の強弱を把握することができた。すなわち、今回収集した雑誌は、戦前に流行した通俗性欲学の流れを汲み、性科学や精神分析・精神医学に依拠する度合いが極めて高いが、『奇譚クラブ』ではこのような態度は見られない。『奇譚クラブ』の誌面構成は他の風俗雑誌と比較して独特であり、むしろ文芸批評誌と構成・読者層ともに相似するが、同形式の性風俗雑誌は『奇譚クラブ』の他に発見することができなかった。以上のことから、『奇譚クラブ』が極めて独自性の強い貴重な雑誌であることが明らかになるとともに、当時の文壇・文学運動との結びつきが示唆された。年度後半は、ドイツにてマグヌス・ヒルシュフェルト、リヒャルト・フォン・クラフト=エビングら、日本に大きな影響力を持った性科学、精神医学者の文献収集に入った。来年度以降も継続して収集・検討を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通りに研究を進展させることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も研究実施計画に基づき、研究を進めていく予定である。来年度は、本年度収集した資料の検討に基づき、論文2本の執筆・1度の学会発表を予定している。引き続き国外における資料収集・検討を実施するとともに、第二の課題の検討に入っていく。
|
Research Products
(4 results)