2018 Fiscal Year Research-status Report
遺児へのグループによるグリーフケアプログラムの効果測定
Project/Area Number |
17K18248
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
倉西 宏 追手門学院大学, 心理学部, 講師 (40624284)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 死別体験 / 複雑性悲嘆 / 離婚による離別 / ボランティア体験 / あいまいな喪失 / 遺児 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺児へのグリーフケアプログラムについて検討を行うために、2018年度は以下の研究に取り組んだ。グリーフケアグループに関する自死遺児大学生の事例研究では、遺児大学生を対象とした「親との死別体験をわかちあう会」の効果研究を行った。そこでは、複雑性悲嘆質問票においてカットオフ値以上だったものがカットオフ値以下へと悲嘆が軽減することが示された。さらに悲嘆の数値的側面の変化だけでなく、遺児大学生自身が死別を自身の「個別性」として認識できるようになることが見出された。つまり死別体験に取り組むことで、悲嘆の軽減とともに遺児大学生の在りよう全体に変容が生じたと考えられる。また、その喪失後のプロセスにおいては弁証法的プロセスが生じることも併せて見出された。 次に、遺児支援団体におけるケアプログラムへのボランティアの体験とボランティア養成のための研修について検討を行った。そこではボランティアに初めて参加する者を対象とした。ボランティア希望者においても、実際の遺児に会う前は遺児が傷ついた存在であると強く認識してしまうことで、ある種の偏見を抱いていることがわかった。そこから実際に遺児と関わることで、遺児は困難性を抱えつつも一人の子どもであるということを理解できるようになり、遺児という視点と共に子どもという視点からも理解できるようになることが見出された。これらからも、遺児支援のボランティアにおける事前研修において、遺児の困難性だけを理解するのではなく、事例的な検討等も含めた実際の遺児理解を促進することが重要であることがわかった。 またその他にも離婚による両親との離別体験、さらに離婚による離別後に死別に至った事例研究も行った。そこでは死別体験の中でも近年注目されているあいまいな喪失について、弁証法的過程が生じることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度までに①プログラム内容を吟味し、遺児へのグリーフケアプログラムのひな型を作成すること、②プログラムスタッフの養成方法の検討を行うこと、の二つが目標であった。②は論文化も含めて達成することができた。①は検討段階で留まっているが、おおむねのひな型はできつつあること、さらに自死遺児へのグリーフケアグループの効果検討を行うことができたことから、おおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降は新たにグリーフケアグループを実施する予定となっている。ただ、2019年度から大学を異動したため、前任校で準備を検討していた研究協力者を募集方法の再検討を行うという課題が生じている。ただ、この点は所属大学の研究支援課などとも相談を行いながら、学内での可能な研究協力者の募集方法を確認することで問題を解決することが可能であろうと思われる。ただ、当初よりも実施の予定が遅れる可能性が考えられる。 上記が解決されれば、①研究協力者の募集②インフォームドコンセントも含めた事前の面接調査③グリーフケアグループの実施④事後調査の実施、という手順で進める予定である。
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Causes of Carryover |
所属大学において個人研究費が支出されており、その部分で補うことが可能な点があったためである。次年度はより情報収集活動を行うこととともに、調査を実施予定のため、そのデータ処理のための人件費等で消化される予定である。
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Research Products
(4 results)